舞い戻った一つの仮面により感情は移ろう

「帰ってったわね、新一君達・・・でもこれであの人達が諦めてくれるかどうか・・・」
「諦めるかどうかなんざもう知るかよ。少なくとももう俺はあいつらを助けることなんかしたくねぇし、蘭もおんなじ気持ちなのは確かなんだ。次来るような事があるなら今度は完全に縁切りするくらいの気持ちくらいにはもうなっちゃいるが、お前もお前で一応事情を知ってんだから間を取り持ってくれだなんだと色々言われかねねーぞ」
「そうなったら私もキッパリと新一君達の事を拒否するつもりだから別に構わないわ。もう今回の件で私も新一君達の事を信用出来るような気持ちなんか無くなっちゃったし、仮にその男の人達を捕まえて元に戻れる事が出来たとしてもあれだけ勝手な姿だとか発言を見聞きしてたら、もう友達として見たり接したりするのも勘弁としか思えなくなったもの」
「・・・園子がそこまで言うってあたり、端から見りゃ本当に新一達の姿やら発言やらは見るに堪えなかったってことか」
そうして園子がちょっと疲れたように漏らす声に小五郎が自身の気持ちを吐き捨てるように口にした上でどうなのかと心境を問い掛けると、迷う様子もなく関係を持ちたくないと言いきる様子にタメ息を吐くように受け止める。何だかんだ新一と付き合いが長くて面倒事にも耐性はそれなりについていて寛容な考え方の園子だが、今回の件で本当に愛想やら何やらが一気に尽きたのだということを。
「・・・鈴木や毛利さんはこう言っているが、改めてお前ももういいのか毛利?工藤達に関してあんな風に言って距離が空くような事になったが・・・」
「大丈夫です、荒垣さん。新一達についてはさっき話した通りでもう新一についてはいいって考えましたから・・・これから新一がどうなるかは分かりませんけど、もう私の中には新一に対する気持ちはありません」
「・・・そこまで迷いなく言えるなら問題はなさそうだな」
ただ荒垣は改めて蘭にどうかと確認を向けるが、迷いはないどころかスッキリした笑顔を向けながら答えるその顔に若干口元が上がりながらも、すぐに表情を引き締めて小五郎に視線を向ける。
「・・・取り敢えず改めて夜になったら工藤の家に連絡をした方がいいと思います。これから工藤がどうするかは両親達と話し合って決めるかとは思いますが、その話し合いやその後に取る行動次第じゃ俺達も工藤の事実を知っているからと、なし崩しに巻き込んでくるような行動や策を取ってこないとも限らないと思います。だから俺達は工藤の事は何も知らないで通す代わりに工藤達にもこちらを巻き込むなと、そうした時の注意をして釘を刺しておくべきです」
「あ~、確かにその辺りは今後面倒にならないように言っとくべきだな・・・分かった。そこに関しちゃ後で俺が連絡しておく。今回の件はお前の言葉がなけりゃ色々面倒になってた可能性があったことを考えりゃ、これくらいは俺がやらなきゃ面目が立たないからな」
「お願いします」
それで荒垣が口にしたのは念には念を入れての以降への対処についての進言であり、その中身に小五郎もすぐに頷いた上でそうすると返すのだが・・・そんな荒垣の様子に蘭は控え目に微笑を浮かべていた。新一の推理がまとまった時の不敵な笑みを見た時の分かりやすく見惚れていたような物と違い、一つ一つ落ち着いて物事を考えて確かに動いている落ち着きのある荒垣の姿を噛み締めるように。


















・・・そうして場は解散となった後の夜に小五郎は工藤邸に連絡し、釘刺しについての話をするとその事に気が行ってなかったのか・・・あるいはまた何か別の思惑や策があるかのような雰囲気を会話から感じた小五郎は、強い口調でこちらの癇に触るような事はしないようにすることとそれを破ればそれ相応の対応をすると言って電話を切った。荒垣の言葉がなければそれこそ何か妙なことをされて、否応なしに巻き込まれるような形を取られかねなかったのではないかという危惧を抱く形でだ。

そうして電話を切って蘭に経緯を話した小五郎は園子や荒垣にはお前から報告を頼むと言い、蘭はその言葉を受けて翌日の学校でまず園子に話した上で盛大に呆れたというリアクションを取られた後、次に荒垣には放課後に荒垣が帰る前にその事を報告した。









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