舞い戻った一つの仮面により感情は移ろう

「ねぇ新一・・・そんな顔になってるのって多分とかじゃなく、私がこんなことを言うなんてって思ってるんじゃない?」
「そ、それは・・・確かに、そう思ったけど・・・」
「だよね。実際昔の私なら何で言わなかったのって言った後に私も新一を手伝うって言ってたと思う・・・何だかんだで私、新一の事が好きだったって気持ちがあったから」
「好き、だった・・・っ・・・!?」
そうして静かに蘭が穏やかな笑みを携えながら話しかける声に新一は反応するのだが、自身を好きと言うその中身に喜ばないどころかハッとしたように目を見開いた。好きだ・・・ではなく好きだったと、ハッキリと過去形で言いきったことに気付いて。
「でもそれももう終わっちゃった事・・・昔の私だったなら貴方の事を何だかんだ言っても好きだからで許せてたっていうか、新一だからで済ませる事が出来たと思う。けれど貴方が今の話に出たように自分勝手でいて私やお父さんの事なんか考えもしてないこともそうだし、貴方が推理小説や事件に出会うことを優先して家の事をおざなりにしてきたこと・・・これのどこに自分は一人でも大丈夫だみたいなことが言えるの?むしろ貴方、優作さん達や博士に頼って今こうやってここにいるんだよね?今もこうして自分一人じゃどうしようもないって事で三人の事を頼って来たのに、もしここに入り込んだら後は自分でやれるし一人で私達を騙せるからって胸を張って言えたの?」
「っ!・・・その言い方は、いくらなんでもひでーよ・・・」
「酷い?だってやろうとしてたことには間違いはないでしょ?それを否定出来るの?」
「ぅっ・・・」
ただそこに言及する前に蘭から挙げられていく問題行動についてに新一は何とか抗議の声を漏らすが、否定出来るかと淡々と聞かれてすぐさまに言葉を詰まらせた。言っている事の一つ一つ間違いなどないとしか言えないと。
「・・・前の私だったならこんな風には言えないっていうか考えられなかっただろうし、なんだったら新一を助ける方が大事だって風に言ってただろうって思う。でも荒垣さんのおかげで無条件で新一の面倒を見るだったり手助けをすることの意味を考えるようになれたと私は思ってるの・・・貴方は私とか博士みたいに周りの人が自分を助けてくれる人がいるのが当然で、そういったことを自然としてしまってたから貴方は本当に一人だけで暮らしていくんじゃなくて私達の手助けを前提にしていたからこうなったんだなって」
「あ、荒垣さんからだって・・・!?」
「うん、荒垣さんから言われなかったらそういったことを考えられてなかっただろうなって今なら思うけど・・・だからこそ今の私からしたら思っちゃうのよ。今の感じから荒垣さんが余計なことを言ったんだみたいに感じてるのかもしれないけれどさ・・・そこで怒るってことは私の世話が入ることは新一の中で当然だったり、計算に入れてたってことの裏返しだよね?」
「「「っ!」」」
更に蘭が続ける中で荒垣の事が出てきてたまらないとばかりに新一は怒りを瞬時に浮かばせるが、すぐにその発言から切って返すように言葉にされた中身に新一だけでなく優作に有希子も含めてひきつるように息を呑んだ。
「あ・・・その反応的に優作のおじ様達も蘭の言ったような事を本当に自然に計算してたようね」
「だろうな・・・まぁ有希子ちゃんが前にどうして蘭が節介を焼きに来ないのかって言ってきたことからある程度予想はしてはいたが、蘭の言葉通り自分達がいなくても蘭や周りの手助けは自然と受けられるだろうから新一は大丈夫だって事で海外に行こうって考えたんだろうな」
「「っ・・・!」」
そんな反応にすぐに園子も小五郎も察したというように言ったような事を考えてたのだろうと口にするが、中身以上に呆れを含んだ声色に本来なら否定を返していただろう筈なのに二人は否定出来ずに言葉を詰まらせるしかなかった・・・蘭が新一の面倒を見てくれるから大丈夫と自然に勘定に入れていた部分から新一を一人暮らしさせてもいいんじゃないかと見積もっていたのは、今までの話から否定出来る筈無いと突き付けられた為に。









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