舞い戻った一つの仮面により感情は移ろう

そうして知らず知らずの内に園子の心も離れていたことなど知らないままに新一は一人の時間を過ごしていくのだが、家事より推理に時間を使いたいと思っていることもあったが・・・両親同様に蘭が自主的に世話やら家事やらをしに来てくれる事をナチュラルに計算に入れていたことにより、全くそんなことをしに来ないどころか一人暮らしなのだから自己責任だろうというように返されたことに、理屈としては理解はしても気持ちとしては荒垣に対する逆恨みに近い物を抱いていた。蘭の態度から明らかに自分への好意やらが薄まってきているのも感じていたことからだ。

ただそれでも事件の起きない空いた時間には積極的に話し掛けたりデートに誘ったりとコミュニケーションを絶やさないようにしていた新一だったが、デートに行く度に事件が起きて台無しになることは前述した通りであると共に話し掛ける時の中身に関しては、推理や事件が大半を占めていて次が運動能力を高めるためにやってたサッカーの話題で後がその時その時にあったことについてのアドリブくらいで・・・推理や事件もそうだし、サッカーに関してもルールは知っていてもそこまで好きと言える程の関心も蘭にはなかった。

だが新一は好きになってくれるかというより自分がこれを好きなんだというのをアピールするように話し掛けるのだが、心の距離が離れている相手の趣味についての自分語りを聞いて好きになるか・・・答えは否以外になく、これに関しては完全に荒垣のせいではなく新一の自業自得であった。自分に対して前は少なからず好意があったのは分かっているのだからで、前以上に自分の話で押し通そうとした見通しの甘さは。

ただそんな風に荒垣のせいだと思っていた新一が、更に荒垣に対しての心証を悪くしたのは自分を小さくした薬を飲ませた男の雰囲気が新一から見たら非常にダブって見えてしまったからであった・・・数日前に蘭と別れてから追った男の片割れに不意打ちを食らって妙な薬を飲まされて気付けば体が小さくなった新一だが、不意打ちに薬を飲ませた男を初めて見た時から荒垣に似ていると見てしまった。その普通の人を寄せ付けないような鋭い視線や雰囲気を見て、まるで荒垣のようだと。

そこに来て怪しいと見て尾行してみたらそういったことをされた物だから、その男もそうだが相対的に荒垣に対する心証もガクンと新一の中で下がったのである。一応昔からの仲であり悪人ではないことは承知はしているが、その男のやったこともそうだし先程の小五郎に自身を受け入れさせる事の邪魔をしたこともあってだ・・・尚、こういったように考えている新一の頭の中には逆恨みだとか自業自得だといった考えは一切無い。新一からすれば自分の予定に気持ちの一切合切を邪魔した荒垣が気に入らないという気持ちや考えばかりが先走っていて、勝手な敵愾心ばかりが募っていっているのである。自分にとって様々な障害になっている荒垣に対して・・・


















・・・ただ転んでもただでは起きないとばかりに、新一は阿笠と話してもう一度改めて小五郎の元に入り込むための策を練る事にした。小五郎の元でなければならない理由はないが、小五郎の元が色々と一番自分を小さくした男達について自分が追うという姿勢を崩さずいられるだろうから・・・という自分本意であって身勝手極まりない考えから、元々は阿笠が言い出したことではあるがそれで行くと決めたのである。

しかしそれで尚そうしたいと願っても荒垣から言われたことにより、生半可な事を言って頼み込んでもまた毛利家の親戚ではない『江戸川コナン』を預かる義理はない・・・そう言われてしまう可能性は高いと認めざるを得なくなり、ならばともうなりふり構っていられないと優作と有希子の二人を召還する事にした。本当なら自分だけで事を運びたかったし二人にも何も言わずに済ませたかったが、どうしても自分と阿笠だけでは小五郎もだが周りに荒垣がいるなら説得は出来ないだろうからやむなしにと。

それで最初は事情を説明されて慌てて外国から帰ってきた二人は考え直すようにと行ってきたが、新一が自分で奴らを捕まえたいということを曲げなかった為に小五郎の元に入れ込む事に賛同したのだ。新一がここまでになっているのだから大人しく待っているだけなど出来ないのは今までの経験から分かっているから、ならばその手助けというか毛利家に入れ込む為の芝居をしようと。

そうして二人も加わり『江戸川コナン』の両親だという設定での変装用のマスクや服を見繕い、こうこうしてこういうように言おうといった打ち合わせをした上で四人は再び毛利家へと向かった。









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