いつかを変えることの代償 終幕(後編)
「・・・何かを得る時には何かを失う。それはどうあがいても変わることはありません。金銭的な取引は勿論そうですが、何の道具も使わない趣味・・・まぁ走るなりなんでも構いませんが、そういったお金や対価を必要としない物なら何も失っていないと思うかもしれませんが、それに費やす為の時間に体力というものは確実に失われています。要はどれだけ自分が何も失わず、得だけを貪ろうとしたところで失うものは確実に出てくるということです。まぁこの辺りは満足しているから損はないなどと言う人もいるでしょうが、これは紛れもない事実です」
「まぁそりゃ時間に体力はどうやったって消費するもんだしな・・・でもそれが何だってんだよ?」
「毛利さんも今の生活を得るために代償を払ったのでしょう。前のようにはしないようにと色々と決めて。その結果として今こうなったのです・・・私が色々と言って気分を害したと言うのは多少は申し訳無い気持ちこそはありますし言われたくない事かもしれませんが、そういうものだと考えた方がよろしいですよ。工藤さんが苦しむことになりはしたものの、それは自分の見識の甘さを知るための代償を支払った為だと」
「・・・優作さんが望んで支払った代償じゃねぇと思うんだが、それは・・・」
「毛利さんに接触してきたのは大方どうして前の通りにしなかったのかを知るためでしょう。もし毛利さん単独なら工藤さんは多少考えるところが出来るくらいになって、明智警視や私の言葉ほどは効いてなかったでしょうからそこは単純に工藤さんの運が悪かったとでも思った方がいいですよ」
「・・・言いてぇ事は分かるが、自分で自分の事を悪く思えみたいなことを言うのはどうなんだよ?」
「前は地獄の傀儡師として何度か刑務所に留置所に入ったり、犯罪者として恐れられたり罵倒もされてきましたからね。悪感情のこもった目を向けられることには慣れていますし、それくらいされても当然と思っていますから別に平気ですよ」
「・・・それもまた前世の経験ってやつもあるんだろうが、どっちかっつったらオメーだからそう考えられんだろうな高遠・・・」
「えぇ。普通の人ならそんな風にはならないでしょうからね」
「だろうな・・・ま、優作さんについちゃ確かに心残りはあるがもうそういうもんだって思うことにするよ。これ以上俺が何か考えても仕方無い気もするからな」
「えぇ、そうしてください」
高遠はそんな小五郎へとこういう考え方をするようにと勧め、途中の話の中で口が達者な高遠にことごとく返されはするものの最後には覚悟を決めたと頷いた。自分までもを悪者としても構わないといった遠慮のない物言いの高遠の気遣いに応えるように。
「・・・取りあえずこれで私は帰らせていただきます。伝えるべき事は伝え終わりましたし、次のステージに向けての準備もありますのでね」
「おう。今度は自分でチケットを取って見に行くからよ」
「また見に来てくださるのですか?」
「ま、何だかんだ言って俺もオメーに世話になったからな。それにチケットくれなきゃ行かねぇなんてのは流石に違うと思うし、単純にオメーのマジックはすげぇって思ったしな・・・だから毎回って訳にはいかねぇが、オメーのマジックショーに行くよ。明智は立場上進んで来る気にはなれないだろうから、俺一人でもよ」
「・・・クス・・・でしたら連絡先をお教えしますので、ショーに来たいというのであれば事前に連絡してください。チケットを送られるだけが嫌だと言うのであれば、いい席のチケットを確保しておきますよ」
「おう、わりぃな高遠」
そんな姿に満足したように立ち上がる高遠へ小五郎が笑顔を浮かべまたショーに行くと言うと、皮肉げでも冷笑でもない微笑みを浮かべて返す高遠に一層小五郎は笑顔で返す。裏など何も考えることなく、ただ親しい人と接するように・・・
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「まぁそりゃ時間に体力はどうやったって消費するもんだしな・・・でもそれが何だってんだよ?」
「毛利さんも今の生活を得るために代償を払ったのでしょう。前のようにはしないようにと色々と決めて。その結果として今こうなったのです・・・私が色々と言って気分を害したと言うのは多少は申し訳無い気持ちこそはありますし言われたくない事かもしれませんが、そういうものだと考えた方がよろしいですよ。工藤さんが苦しむことになりはしたものの、それは自分の見識の甘さを知るための代償を支払った為だと」
「・・・優作さんが望んで支払った代償じゃねぇと思うんだが、それは・・・」
「毛利さんに接触してきたのは大方どうして前の通りにしなかったのかを知るためでしょう。もし毛利さん単独なら工藤さんは多少考えるところが出来るくらいになって、明智警視や私の言葉ほどは効いてなかったでしょうからそこは単純に工藤さんの運が悪かったとでも思った方がいいですよ」
「・・・言いてぇ事は分かるが、自分で自分の事を悪く思えみたいなことを言うのはどうなんだよ?」
「前は地獄の傀儡師として何度か刑務所に留置所に入ったり、犯罪者として恐れられたり罵倒もされてきましたからね。悪感情のこもった目を向けられることには慣れていますし、それくらいされても当然と思っていますから別に平気ですよ」
「・・・それもまた前世の経験ってやつもあるんだろうが、どっちかっつったらオメーだからそう考えられんだろうな高遠・・・」
「えぇ。普通の人ならそんな風にはならないでしょうからね」
「だろうな・・・ま、優作さんについちゃ確かに心残りはあるがもうそういうもんだって思うことにするよ。これ以上俺が何か考えても仕方無い気もするからな」
「えぇ、そうしてください」
高遠はそんな小五郎へとこういう考え方をするようにと勧め、途中の話の中で口が達者な高遠にことごとく返されはするものの最後には覚悟を決めたと頷いた。自分までもを悪者としても構わないといった遠慮のない物言いの高遠の気遣いに応えるように。
「・・・取りあえずこれで私は帰らせていただきます。伝えるべき事は伝え終わりましたし、次のステージに向けての準備もありますのでね」
「おう。今度は自分でチケットを取って見に行くからよ」
「また見に来てくださるのですか?」
「ま、何だかんだ言って俺もオメーに世話になったからな。それにチケットくれなきゃ行かねぇなんてのは流石に違うと思うし、単純にオメーのマジックはすげぇって思ったしな・・・だから毎回って訳にはいかねぇが、オメーのマジックショーに行くよ。明智は立場上進んで来る気にはなれないだろうから、俺一人でもよ」
「・・・クス・・・でしたら連絡先をお教えしますので、ショーに来たいというのであれば事前に連絡してください。チケットを送られるだけが嫌だと言うのであれば、いい席のチケットを確保しておきますよ」
「おう、わりぃな高遠」
そんな姿に満足したように立ち上がる高遠へ小五郎が笑顔を浮かべまたショーに行くと言うと、皮肉げでも冷笑でもない微笑みを浮かべて返す高遠に一層小五郎は笑顔で返す。裏など何も考えることなく、ただ親しい人と接するように・・・
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