舞い戻った一つの仮面により感情は移ろう

「・・・ったく、一体何だったんだ博士にあのガキは・・・」
「というか荒垣さんの言葉が無かったら博士もあの子もウチに来るのを諦めないって言うか、そうしようとするためにどうにかって動いてた感じがしたけど・・・流石に大袈裟っていうか、気のせいかな・・・」
・・・そうして二人がいなくなったのを見て小五郎が面倒そうに頭をかき、蘭が自身が感じたことを何とも言えないというように口にしていく。『江戸川コナン』という存在を小五郎の元に置きたいという気持ちの強さがあると思えたと。
「それに関しちゃ俺も似たような考えが浮かんだ上で、一つ疑問がある・・・それがどうなのかを確かめる為にも、毛利に頼みたい事がある。頼めるか?」
「えっ・・・私にですか?」
荒垣もそこに加わると共に頼みたい事があると蘭に話し掛け、首を傾げる様子に更に荒垣は口を開いていく・・・



















・・・そういったように小五郎の探偵事務所で話が為されている中で時間は進み、阿笠とコナン・・・いや、その正体である新一は阿笠の家に戻った。



「くそっ!あんな形で荒垣さんが邪魔になるなんて・・・!」
「落ち着くんじゃ新一・・・」
「言いたいことは分かるよ、博士・・・でもあの人がいなけりゃこんな風にここに戻ってこずにおっちゃんの所に転がり込めてたんだ!これが落ち着いてられるかってんだ!」
「む、むぅ・・・」
阿笠の家の中に入るや否や、阿笠以外に誰も聞いていないと分かっている為に新一はたまらず壁を叩き怒りの声を上げ、阿笠のなだめの声に抑えられないとばかりにまくしたてていき声を詰まらせる。
(気に入らねぇ・・・俺を小さくした薬を飲ませたあの男に似てるってのもより気に入らねぇが、それ以上にあの人のせいで蘭の気持ちが離れていってることが・・・そして今度は俺が元に戻るための邪魔までするのか・・・!)
そしてそのまま内心で阿笠に聞かせたくない事を思う形で言葉にしていく。ハッキリと荒垣が気に入らないと怒りを抱く形で。






・・・新一にとって荒垣という存在は帝丹高校に入学される前までは、他より付き合いのある先輩の一人でしかなくて大した興味を持つような存在ではなかった。だがそれが変わったのは荒垣が高校に入学して小五郎の元に行くようになりだしてから、小五郎もそうだが蘭の新一に対する態度が徐々に変わりだしたからである。

最初はどういうことかと軽く疑問に思うくらいだったが、高校に入る前後にその変化がより顕著になっていたことに新一は気付いた・・・明らかにその頃には以前のように仕方無いと言いつつも笑顔を浮かべながら面倒を見たり近くにいてくれるようなことはなくなるというか、むしろ新一のやることだったり生活の様子に難しい顔をして引くような事の方が普通になった事に。そしてそれがどうしてなのかは園子に聞いたことから荒垣が理由であると行き着いたのである。

新一は園子に聞ける限りの事を聞いた上で何で蘭がそんな考えになっていったのを変えなかったのかと聞いた。しかし園子が一人暮らしの事もそうだが事件に関わることを嬉々としながらとは言わずとも、平然とした様子でいて関わり続けることをどうかと思うといった荒垣の考えに蘭が同調するのは別におかしくないと思った上で、新一の世話やらを無償の無条件でするだとか事件に出会すのを蘭も普通だとか喜ぶようになれって言うのか・・・と言ったように言われた新一はたまらず文句を取り下げるしかなかった。話というか園子の雰囲気的に下手に否定を返したらまずいという空気を感じたことのもあるが、端から見たら勝手なことだという考えもなくこう考えているのだ。自分は蘭とは一緒にはいたいけれど、かといって蘭に事件に慣れるような事は望んでいないと。

だから新一は園子に詰め寄る事は止めた上で別の方向から攻めようとデートに誘ったりするわけだが、それらはことごとく事件に出会すことで台無しになって蘭の気持ちが離れていくと共に・・・園子が二人の仲を応援したいと考えていた気持ちも失わせてしまったのである。荒垣の考えを聞いて納得したのもあり、こんな新一の様子では蘭の心が離れるのは当然だし自分も離れようというように思う形でだ。









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