舞い戻った一つの仮面により感情は移ろう

ただそういったように蘭の気持ちは荒垣の方に向きはしてはいるが、長年の想いは根深いというかまだ完全には消えてなくなってはいない・・・それが故に蘭はキッパリとは新一とは縁を切ることは出来ず、二年に進級して少し経つ頃に新一から遊園地に行かないかとのデートの誘いに応じることにした。だが・・・






「・・・結局また事件に出会したのね、蘭・・・そしてオマケにさっさと新一君は何かまた事件らしい匂いを感じたのか、途中でこれでって行っちゃったと・・・」
「うん・・・チラッと見かけた程度だったけど、その事件で容疑者になった人達を事件の後で見つけて後を追い掛けるために私を置いてったんだ・・・見た目は普通の人って言えないような異様な迫力はあったのは確かだけど、その人達の何かが引っ掛かったのか誤魔化すような笑顔を浮かべてじゃあなって後を追うようにね・・・」
・・・そうしてそのデートの翌日のポアロにて。
蘭が昨日のデートで何が起きたのかについてを対面に座る園子に話していくのだが、その顔には本来なら浮かんでいた筈の陰りや心配といった気持ちなどは一切なく・・・心底から呆れたというような表情が浮かんでいた。
「・・・もう新一が事件だったり怪しいことに首を突っ込むことに関しては、今更だし止める気にもならないから別にいいのよ。でも毎度毎度何処かに行く度にそうなることに付き合わされるのはって気持ちになるし、そうして誤魔化すように離れていった姿を見て尚更に感じたの・・・茶化してとかそんなんじゃなく本気で新一が私の気を引きたいからデートに誘ってきてるし恋人になりたいって思ってるんだろうって園子は言ったし、新一本人が聞けば探偵としてやるべきことをやらなくてどうするみたいなことを言うんだろうけれど・・・もう私は色々な意味で新一に付き合いたくないってね」
「・・・それ、本気で言ってるの?蘭・・・」
「本気よ、園子。ただ一応言っておくと新一の事を人として嫌いになったとまでは言わないけれど、もう今は新一と将来的に恋人とか夫婦になりたいみたいな気持ちなんて無くなってるの・・・今ならもうハッキリと言えるわ。事件とかが解決しなくていいとは言わないけれど、あんな風に私より厄介事に首を突っ込んで優先するなら私を巻き込まないよう一人で勝手にしててほしいってね」
「そう・・・蘭はそう思うようになったのね」
その上で蘭が心底から愛想を尽かしてウンザリしたといったようにもう新一に付き合いたくないといった言葉を漏らしていく様子に、園子も心配そうな様子はなくむしろ笑顔を浮かべていた。
「ならもういいじゃない。新一君が聞いたら不満に思うだとか埋め合わせは今度にするからとか言ってくるだろうけど、どうせ今までのパターンからしてその埋め合わせに付き合ったってまた事件に巻き込まれるのがオチで、堂々巡りになるのが目に浮かぶわ。それに私も荒垣さんが帝丹高校に通うようになってから新一君と蘭が将来的に恋人になるんじゃないかってことに関して、どうかって思うようになってたしね」
「・・・そうなの、園子?」
「えぇ。でも前までの蘭だったらそんなことを言ったら不機嫌になるのは目に見えてたし、何だかんだでデートに付き合うくらいなんだから新一君には完全には愛想は尽きてはいないんだろうから何も言わないでいたんだけど、もうそこまでの気持ちになってるんなら言っちゃってもいいかなってね~」
「あ~・・・何だかんだでデートしてた事は確かだし、新一が家の事とか含めて変わらないのかなって思ってたのもあるけれど、結局色々言ってももう意味ないんだなってことが昨日のデートで分かっちゃったからさ・・・そしてそれと同時に新一と恋人になりたいみたいな気持ちが無くなっちゃってた。確かに前なら恋人になるのを諦めたらみたいに言われてたら怒ってたと思うけれど、もうそんなこと微塵も思わないくらいに綺麗サッパリとね」
「うん・・・確かにそんな笑顔を見せられたら嘘を言ってるとは思わないわね。新一君への気持ちはまだ無くなってないんじゃないかなんて風には感じないわ」
そうして自分の目から見て考えたことについてを話していく園子に、蘭も自身の考えを持って返していくのだが・・・そこで浮かぶ影の無い笑顔と言葉に確かにというように頷き返した。蘭は本心から言葉を口にしていると分かると。









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