舞い戻った一つの仮面により感情は移ろう

・・・そうした優作達の言葉を受けた小五郎は新一がいない内に蘭と園子と荒垣を集め、そういった言葉が出てきた事を伝えると揃って三人とも何とも言えない気持ちを抱いたと返したというか・・・返さざるを得なかった。予想はある程度出来たしこの場では蘭の為にも口にされなかったとは言え、蘭と新一が未だに両思いなままであってそこから世話を焼いてくれるとナチュラルに勘定に入れていたことに。

そうしてそんな風に三人がなっている中で、蘭に対して小五郎は複雑そうにこう言った・・・蘭が今どう思っているかについては敢えて言葉にしては聞かないが、新一もそうだがその両親二人は蘭が押し掛け女房だったり将来的な新一の結婚相手と自然と見ている事は間違いないと思うし、正直昔のまま蘭が変わっていなかったら自分もそうなっていただろうとは思った。けれど今となっては新一達の事を荒垣から聞いた事から今のままなら歓迎出来ないとしか思えないが、蘭自身はどう思っているのか・・・と静かに確かめるような目と声で。

そんな問い掛けに蘭は複雑さを滲ませながら正直な所として、昔より気持ちは確実に離れていると答えた。新一の事が嫌いというような事はないが、だからと言って新一と結婚する未来についてを考えられるかと思えるかと言われたら・・・昔程は夢見るような気持ちはないと、まだ完全には新一に対する気持ちが抜けきれていないというような様子でだ。

そういった答えにそれまでなら茶化すように新一との事を夫婦と言っていた園子は急いで答えを出しても良くないと言い、荒垣が高校を卒業するまでにどうするかを決めればいいと言ったことで蘭もそうだが小五郎も頷き、以降も慎重に行こうとなった。



















・・・そうして再び時間は進んでいき蘭達が二年に進級というようになって、そうなる前くらいに一度優作達が連絡を事前にすることなく工藤家に帰ってきたのだが・・・二人はろくに掃除をしていない様子に呆れると共に小五郎の方にも有希子がどういうことかと連絡をするのだが、一人暮らしをするようにと切り出したのはそっちなのもだが何より新一が助けを求めてこないのに、何でこっちが何も言われずともお節介をしなければならないというようにあっさりと返して終わらせた。

この辺りは実際に新一から助けてほしいと言われれば仕方無いとみて一度くらいは助けるのは構わないと小五郎は思っていた。と言っても蘭にだけ任せるんじゃなく自分も現場に行った上で、もう二人を呼び戻せと説教する気満々でだ・・・ただ新一はそう言われるのを察知してか自分一人でも大丈夫とただの意地からなのかはともかく、そんなことは言っては来なかった。小五郎にもそうだが蘭にも同じようにだ。

だから二人もそうだし荒垣や園子も新一の事は助けることなく一年近くという時間を過ごしてきたわけであり、新一も新一で一人で暮らすこと自体は出来たから助けを呼ぶといった行動は起こさなかったのだが・・・やはり優作達夫妻が家の中を見てたまらず連絡をするくらいだったのだから、精々が使う部屋やよく使う場所を精々くらいの感じにしか普段は清掃をしていなかったのだろう。

その電話の後に二人がすぐに大掃除したかハウスキーパーを呼んだかは分からないが、前に聞いた冷蔵庫の中身がほとんど見当たらないという点からハウスキーパーを呼んだ上で外食しただろうと小五郎達は推測した。流石に数ヵ月も放置された埃っぽい部屋で寝泊まりしたくないだろうし、食材も何もないなら自分達が頑張るよりはもう掃除も食事も外部に頼った方が旅の疲れもあるし金も余裕があるのだから、その方が断然楽だろうと。

その辺りは小五郎達の推測でしかないが、一週間程の時間が経って優作夫妻はまた海外の拠点に戻っていくのだが・・・その前に二人から新一のフォローを頼むと言われたのだ。新一は必要ないと言っていたけれど、あの生活振りを見る限りだと自由にさせられないと。

だが小五郎はそんな声に対して言葉だけは丁寧にするものの、なら日本に帰って一緒に暮らせばいいし俺も蘭も助けを求めない新一の為のボランティアを進んでやる気はないと単刀直入に返して会話を終わらせた。たまらず言葉を詰まらせた様子を見ながらも、心配するくらいなら自分達が元に戻ればいいという分かりやすい単純な事をやろうとしない二人の都合のいいことを聞く気はないと。









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