舞い戻った一つの仮面により感情は移ろう

・・・小五郎の心変わり。これがやけに早い理由に関しては最初は荒垣も新一とはそれなりに付き合いがあることから、やたら早くないかと感じていた。だが元々から新一とは違い普通の探偵として活動していたこともだが、蘭と違いへっぽこ探偵だと思われている事から新一はそこまで小五郎と普段からそんなに仲良くというような関係は築いていなかったし、事件に出会しやすいなんて事もなかった上で厄介事が起きてそれを解決したいみたいな欲求もない・・・そんな考え方の違いがあったからこそ、小五郎は荒垣達が新一を避けたいという気持ちや考えを理解したのである。確かに端から見るなら新一のような考え方もそうだが、それに付き合うのはどうかという気持ちになるのは分かると。

そういった言葉を小五郎当人からもらった荒垣は納得すると共になら蘭にはどうするのかと聞くのだが、そこで出来るなら今の話を蘭にもしてほしいと願われた・・・勿論新一の事を好きな蘭がすんなり受け入れられるような中身ではないどころか激昂しかねない危険性があるのは承知しているが、かといって遠回しな言葉で徐々に変わってくるなんて思わないし、昔はあれだけ仲良くしてくれたのに荒垣達が何故避けるように離れていったのか・・・それをかつての関係性から話していけば、美鶴に憧れていた部分もあった為に一概に怒りだけで否定出来ない可能性が有り得るからと。

そう聞いて荒垣も下手に細々進めるよりはその方が色々いいだろうと思い、その後少しして蘭とも時間を取って話をするようにしたのだが・・・多少話した時間は長くなったが、結果として言うなら荒垣や美鶴達が離れた理由は確かに言われてみれば理解出来るというリアクションが返ってきた。

これは蘭自身は新一の事が好きなことは確かなのだが、新一と一緒にいれば日常的に起きやすい事件までもを好きになってはいないからだ。あくまでも蘭からしたら好きなのは事件を解決した時にだけ浮かべる他にない笑顔のカッコよさであって、事件の際に集められた容疑者達のピリついた空気もそうだが何より殺人にまで発展した際の死体を見て、結構な数の事件に出会してきた筈なのに未だに慣れないと悲鳴を上げるくらいには蘭は死体に対して拒否反応を示している。だからこそというか新一が自分が事件に出会しやすいということを認めはしないということも含めて、荒垣達が離れていった上で今は事件に出会わない方が普通の生活をしていると聞いて蘭も納得したのである。事件に出会したい訳ではない蘭からしてみれば、そうなるのも分かると。

ただそれでも蘭からしたら新一を好きだという気持ちが話を聞いても強いままなのは確かなのだが、そこは荒垣も承知の上で自分達という端から見た視点で語ったということ及び、新一と近くにいるのもいいが端から見たらどう見えるのかというのを考えてみろと蘭に告げた。これは新一についてを考えろとさも新一が悪いかのように言ったら蘭の性格上そこで激怒して終わりとなるのは目に見えていた事から、まずは外堀から埋めていこうと考えたが故だ。

そんな声に荒垣達の立場もあって考えざるを得なくなった蘭は新一の周りで日常的に起こりやすい事件の事についてに、次第に荒垣達の言葉の影響を受けて前と違うように考えるようになっていた。それは新一当人には言っても自分のせいじゃないと抗議されるだけだろうから言うなと荒垣が頼んだことや、既に荒垣の言葉で新一に関わることに対して否定的になっていた小五郎が蘭を怒らせないような言い回しで話をしていったことで、蘭が一人で考えていったからこそ起きた心変わりであった。

と言ってもそれで今まで好きだった新一の事を全否定するまでの拒否感までは今の蘭には無いわけだが、前の蘭だったら新一もそうだがその両親である優作や有希子にまでも否定的な考えなど浮かぶ筈もなかっただろうに、そこまでの考えを抱くようになったのである。表向きはさも仕方無いというようにしながらもらしいと新一のやる事を受け入れていただろう前とは違い、今は少し距離を置いたことで新一達の全てを許容することが正しいことだとは思わないというよう。









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