かっさらわれる獲物と突き付けられる自分本意

これは蘭が新一が好きで工藤家を悪者にしたくないという気持ちから来て起こした行動であるが、様々に裏切られてきた上で一方的に都合を押し付けられた事と最後の味方である筈の身内である蘭があっさり小五郎の心中をおもんばかる事なく、三人を庇う方に躊躇いなく舵を切ったが故だった。そしてその結果が最早三人が何かを言うだとかなだめようとしても、事の発端である三人だからこそ蘭と小五郎の言い争いは止まることはなかった。

その為に安室が仕方無いというよう英理までも巻き込んで話をした結果として、もう蘭と小五郎を下手に話し合わせるのは止めてくれと安室から言われたからになり、工藤家三人は安室から事前に言われてはいたが想像以上のよろしくない結果を生み出したことに慰謝料として表向きには自分達の口座として作りはするが、小五郎しか自由に使わないし使えない億超えの金を入金した通帳とカードを渡すことにした。

だが・・・英理や安室の取り成しでどうにかそれで落ち着く事になったが、最初はそんなもんいるかと小五郎は怒りのままに拒否しようとしたことに三人は苦痛そうに表情を歪めた。三人が三人ともに新一が元に戻れば小五郎も元のへっぽこ探偵に戻るだけと安室から話をされるまでは信じて疑っていなかったのだが、現実は蘭との関係が一気に険悪になってしまうと共に英理も小五郎程ではないにしても何も言わずにずっと自分達を騙してきた事から、気持ち良くないという考えを抱いているということに・・・もし仮に新一が思うように新一が好きなように主導して小五郎達には事実を秘密に出来たままで組織を壊滅させても、小五郎の事を始めとして元の鞘に収まらないどころかそれこそ名探偵でなくなった後の小五郎達の生活はとんでもないことになったのが今では容易に想像出来ると。

そんな風に三人は衝撃を受けていたのだが、それでも感情的になっていた蘭にも口止めは済んだことから薬のデータは使わせると安室から言われる事になった・・・ただもうこの時には三人は新一が元に戻れる喜びなどなかった。こんな筈じゃなかったという気持ちばかりが頭の中をよぎるような状態になった為に。

・・・しかしそんな三人に構わず安室は事態を進ませていき、赤井やFBIの仲間達に対しての処置をFBIの上層部に突き付ければ痛いところを突かれたとばかりに全面的に要求を受け入れざるを得なくなり、赤井達は人知れずアメリカに送還されることになった。そしてその赤井達が消えた後に灰原が解毒薬を作り新一や自身も飲んで元の姿に戻ってもう大丈夫となった後、灰原改め志保は安室の元にあっさりと向かった。事前に安室がどういった事があったのかを話していた中身を受けたことから、もう自分はこのまま公安に引き受けられた方が収まりがいいと判断してだ。

そしてそんな中で元の体に戻った新一だが、優作に有希子共々喜べるような気持ちになど到底なれなかった。代表的な理由はやはり毛利家との仲がもう戻らないことにあった・・・蘭は唯一新一を庇いたいという気持ちから新一の元に来るが、英理はもう最低限しか会いたくないと言っている上で小五郎に至っては探偵稼業を辞めるにあたって病気療養という体を取るというように今はしているが、いずれ近い内に遠い地に引っ越してお前らと関わらないように生きていく・・・という絶縁宣言までされたのである。ここまで言われてしまえばいかに新一達でも最早関係の修復は不可能だと思わざるを得ず、気持ちが落ち込むことはどうしても避けることは出来なかった。蘭だけが二人と反するように寄ってきているのも相まってだ。
















・・・一見するなら自業自得で救いようがないと見えることだろう。しかし本当に救いようがない事態が何だったかと言うなら、組織の壊滅を公安すらおらず全く新一と関り合いのない機関が単独で起こしていたならデータを使わせてもらうための交渉も出来ずに元の姿に戻ることが出来なくて、いやが上にでも『江戸川コナン』として生きていかなければならない可能性も有り得たのだ。

その点では新一の悪運が何とか作用したと言える結末なのだが、そんなことになど気付けないままこれからも新一達は晴れない気持ちを抱いたまま生きていくことだろう・・・まだ今の方がマシな状態だなどということは考えることなどなく・・・









END









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