かっさらわれる獲物と突き付けられる自分本意

「つー訳で、俺が知ることはこれで以上だ。多分今頃は安室からの話を聞いた工藤新一の為に両親は日本に戻ってきてる頃だろうから、後でちゃんと黙っててもらうのを前提に話がされてるだろうけど・・・その時は工藤新一や両親が全部すんなりと受け入れないだろうから、色々と難儀はしているだろうね」
「・・・本来ならワシが手伝いたい所だが、そうしたら安室君の気遣いを無駄にするどころか余計な手間をかけることになりかねん・・・だからもう後は対岸の火事として見ることすらなく、自分が知らないどこかで今日もゴタゴタが起きてるかもしれんとくらいに思うことにする。その方が色々といいだろうからな」
「それでいいと思うよ。もう後は安室の仕事の一貫であって、とっつぁんがやることじゃないとも思ってね」
そうして話は終わりというように言いつつ難儀との言葉を漏らしたルパンに、銭形は少し難しいといった表情を浮かべつつもう気にしないと漏らすと少し笑うような声で返して肩の辺りで手を振る。
「んじゃ言いたいことは言い終わったから俺様行くわ。んじゃね~、とっつぁん」
「あぁ」
「あぁ・・・ってちょっちょっちょっ!いつものとっつぁんならここで逮捕だ~!って言ってくる筈じゃないの!?」
そうしてルパンはそのままその場を去ろうと歩き出したが、銭形が表情を引き締め直して一言で見送るよう動かなかったことにたまらず慌てて銭形の前に戻ってくるが・・・当人は眉間にシワを寄せながら目を閉じ、腕を組みながら首を横に振る。
「・・・お前の事だから自分が好きでやったことだとか、捨てた物だから気にしなくていいと言うだろうが、ワシとしてはお前に色々と世話になったというようにしか考えていない・・・だから今回に限りお前がここに来て話をした中身も含めてICPOには何も言わずに見逃すようにする。だがあくまで今回だけだ・・・次に会う時はお前が予告を出した時だ。その時は全身全霊を込めてお前を捕まえてやろう」
「そういうことね・・・ほんじゃあ俺はもう行くからまた会おうぜ、とっつぁん」
そこで銭形が口にしていくらしいと言えばらしい義理堅い答えにルパンも納得し、改めて背を向けてその場を去っていくのだが・・・銭形は口元だけだったものの、両者の顔には楽し気であると共にやる気に満ちているといったような笑みが浮かんでいた。次に会う時が前のように追い掛け、逃げるといった関係にまた再び戻る時だということを互いに楽しみにするよう・・・


















・・・それで以降に時間は過ぎていくのだが、そこから日本に帰ることがしばらくなかった上にルパンに集中する状況に戻った銭形は、新一周りの状況がどうなったのかについてを知ることも知ろうとすることもなく過ごしていった。もう自分はルパンから話を聞いたことから、工藤新一関連の事は気にする事はしないようにしようと考えた為に。

ただそうして銭形が気にしないようにと過ごしたのはある意味で確かに正解だったと言えよう・・・一応というか結果だけを言うなら新一は元の体にこそは戻れたが、結局話し合いの結果として小五郎はその後の影響を考えれば探偵という仕事を辞めねば以降に辛い目に合うのが容易に想像出来ることから、最終的に探偵を辞める事を選択せざるを得なかったのだが・・・そこで問題となったのは小五郎が今まで自分達を騙した工藤家と距離を取りたいと言ったのに対し、娘である蘭が新一が元の姿に戻れるんだからこれで全て元通りにしようと反論してきて喧嘩になり、最終的には別居している妻の英理にも話をして英理に蘭を引き取ってもらわねばもう話がまとまらない状態にまでなってしまったのである。









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