かっさらわれる獲物と突き付けられる自分本意

「とっつぁんも話の中で聞いた程度だろうけどさ・・・『江戸川コナン』のいない毛利小五郎ってのは精々荒事になりゃ柔道が強いくらいで、頭の出来というか推理力は工藤新一と比べると雲泥の差って言わざるを得ないレベルらしいのよ。なのに安室から元の体に戻った後『江戸川コナン』のことは毛利さんにどう説明するのかって質問した時にこう返したんだ・・・親が迎えに来たから『コナン』は帰っていったで、俺が入れ替わりの形で戻るで全部大したことなく丸く済むことだろうって」
「・・・は?」
「とっつぁんがそういった反応になる気持ちは分かるよ。話を聞いてただけの俺も唖然としたし、安室も呆れたようにタメ息を漏らしてたしね・・・だから安室が失礼だとは思うけれど『江戸川コナン』がいなくなった後、名探偵の看板を頼りにしてきた依頼人達の謎や事件が絡む依頼を毛利さん解決出来るのかもそうだが、その後の毛利さんや蘭さんがどうなるのか想像出来るか・・・って聞くと、少ししてようやくその質問の意図が分かったみたいなハッとしたような音が聞こえたのよ。頭がいい筈なのにそんなこと一切考えてなかったとばかりの、自分が良ければその周囲もいいだろうってご都合主義としか言いようがないなって思うような音がね」
そこから振り返らず話をするルパンだが銭形がたまらず呆けた声を漏らしたことに、呆れと共に嘲るような含みを持たせた声で続けた。
「そんでまぁそこから安室が続けるわけよ・・・そこで毛利さんや蘭さんだけが『江戸川コナン』がいなくなったことで名探偵じゃなくなったことが何だったんだと詰められるだけで済むならまだしも、そこで何で『江戸川コナン』がいなくなったんだ・・・なんて話題が出てくる可能性に加えて何処に『江戸川コナン』は行ったのかってなる可能性はかなり高いし、そうなったらどう騒ぎを納められると思うって聞いたら組織の事をマスコミに発表するしかないって震えたように答えるわけだけど、公安やICPOが組織の壊滅を今もマスコミに公表してないのはこういう理由があるから出来るわけがないってこともそうだし、何より毛利さんや周りの人を騙してた事を自分の都合で今更明らかにしておいて惜しみない賛辞の声を向けられる・・・って考えるのは甘いとしか言いようがないって安室が言うと、また息を呑んだような音しか聞こえてこなかったのよ。明らかにそんな自分が悪意ある目や声に晒されるのが嫌だっていう響きの音しかね」
「・・・そこまで来るとワシからすれば最早甘いとすらも言えんな。自分がいかに良く見られるかだったり都合良く考えられるかしか考えない辺り、余程都合のいい展開ばかりに救われてきたというか、自然とそうなってきたのだからこれからもそうなると意識せずに考えてきたのだろうな・・・そしてそういった性質は工藤新一だけでなく、その両親もそうだったというわけか」
「そういうこと。ま、そうでなきゃFBIって正体が明らかになってるからっつったって自分達や子どもの家を拠点として使うようにだとか、様々な協力を毛利小五郎達に言わないままにしてきたのは何だったんだってなるけど・・・だからこそ安室は二人の召喚も条件にしたって訳さ」
そうしてルパンから続けられていく言葉に銭形も冷えた表情と声に変わっていく中で、出てきた両親についてをルパンは挙げる。










.
20/24ページ
スキ