いつかを変えることの代償 終幕(後編)

「否定をしたいでしょう?そんなことはない、息子の事は大事に思っている・・・そういったように。ですが貴殿方の取られた行動は一般的に見ればおかしな物だと明智警視にも散々言われたでしょう?工藤君に対して貴殿方が取ってきた行動もそうですが、組織を潰すためにと貴方が工藤君の危機を看過しようとしていたことは・・・それらの事を考えれば少なくとも親として向いていないとまでは言わずとも、不適格な事をしているとは言えると思いますよ」
「・・・だからこそ、私達が子育てが向いていないと言うのですか・・・」
「えぇ。工藤君からすれば別にそんなことはないといったように思うでしょうが、それは貴殿方の性質を大いに受け継いで考え方が近しいものになったからです。もし周りの環境が違って工藤君の考え方が変わるようなことになっていたなら、素直に貴殿方がいなくなる事を受け止めないばかりか、自分の事を見捨てたと言ったような考えになっていてもおかしくはなかったでしょう・・・まぁそういうことが無かったから工藤君の考え方は凝り固まり、離婚といった流れになったのでしょうがね」
「っ・・・!」
更に高遠は冷笑を浮かべながら否定を許さないとばかりに言葉を並べ立てていき、最後の言葉に苦々しげに歯を噛み締める。起きてしまったことはもう否定のしようがない為に。
「まぁそれも、明智警視に工藤君のフォローを入れるようにと言われたことでこれから多少は変わるでしょうが・・・一般とは違う貴方の感性に加え、自由奔放な気質を持つ奥さまをどれだけ貴方が御せるか・・・もう二度と会うこともないでしょうが、見物ですよ」
「・・・わざわざそんなことを言うために私に接触してきたのですか?もう会わないような人物を相手に・・・」
「クス・・・これでも義理堅い性格なんですよ、私は。勝手にやっている事ではありますが明智警視に対しての恩もありますし、毛利さんも多少とはいえ縁がありましたからね。ただやはりというか、最も大きな理由は・・・工藤さんに聞いてみたいと思ったからですよ。人としてより探偵としてを優先した息子の姿は、親としての貴方にとっての本意だったのかと」
「っ・・・それは・・・」
そんな優作にこれが最後とばかりのような事を言う高遠にそもそも何故接触したのかと問うと、また冷笑を浮かべて返すその中身に視線をさ迷わせる。肯定すれば新一の失敗は無いものとして見ている愚かな親と烙印が押されることになるが、否定すれば新一の探偵としての活躍までもを否定するような事になり、ならどうしてそう育てたのかとなるために。
「・・・まぁ今となっては最早どうでもいいことですけどね。後は精々頑張ってください・・・人並みの感覚というのがどういうものか、自分で理解した上で息子さんと奥さまに理解していただけるかは貴方の努力次第です」
「っ・・・」
そんな姿へもう言いたいことは言い終わったと高遠は今度こそ最後の言葉を残し、冷笑と共に暗闇の中へと消えていく。辛そうに表情を歪める優作を残して・・・









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