かっさらわれる獲物と突き付けられる自分本意

「へぇ~、ここがとっつぁんの今の住みかか。ちょっと古い感じだけど、やっぱ畳の方が寝やすいの?」
「帰れ、ルパン。今はお前に構っている暇はない。というより何故俺の所に来る」
・・・銭形の今の住まいに来たのはまさかのルパンであり、ちょうど帰宅のタイミングを狙ったように笑顔を浮かべながら銭形と顔を合わせて挨拶をしてきた。
しかし銭形は瞬間にピリついた空気を纏わせたものの、すぐにルパンを無視するようにアパートの部屋に入るがそのまま後について入ってきたルパンに視線も合わさず冷たい声で返す。
「そんなピリピリしないでよ、とっつぁ~ん。ちょっと最近俺が予告出してもとっつぁんが来ないから、どうしたのかって思って来てみたんじゃない。んで、何があったの?」
「・・・貴様には関係無い。帰れ」
「ちょっと、いつものとっつぁんらしくないじゃん・・・まぁそんなこと言わないでよ~。何でとっつぁんがそんな風になったのかみたいな事は聞かないけど、その代わりとしてちょっと俺に付き合ってよ。すぐに帰るからさ~」
「・・・フン」
ルパンはそんな銭形にめげずに話し掛けていき、勝手に軽く話をするからとの言葉に視線を向けることなく畳の上にあぐらをかいて座り込み膝の上に肘を置く形で頬杖をつく・・・本来なら今すぐルパンを捕らえたいという気持ちを組織を追うために必死に抑えているのと、長年の付き合いからルパンに話など聞かないから帰れといったことは聞くようなタイプではないから、顔どころか視線も合わせず話を流して終わらせようと考えたために。
「んじゃ話すけどさ~・・・俺様ちょいととある所にお宝があるかと思ってそこの事を色々と調べてみたんだけど、結果として言っちゃうと大ハズレ。結構意気込んで深くまで探してみたんだけど、今回俺様の欲しがるお宝なんか見当たらなかったのよ。そんで無駄骨を折ったって訳さ」
「くだらん。そんな話をするためにわざわざ俺の所に来たというのか?」
「それもあるけど、ちょっとそこについて調べた資料がもう役に立たなくなったからとっつぁんにあげようかなって思って。もう俺様はいらないからこれあげるから、適当に裏を使うなり捨てるなりどうとでもしてよ。んじゃそういうことだから、じゃあね~とっつぁ~ん」
‘ガチャッ、バタン’
「・・・なんだったんだ、ヤツは一体・・・」
そうしてルパンは軽い口調でおどけたように自分の見立て違いと資料を懐から取り出し、床に置いた後ですぐに背を向けて部屋を後にしてドアが開閉した音を聞いてから振り返り、銭形は怪訝そうにルパンの置いていった資料の束へと手を伸ばす。
「・・・・・・何っ・・・こ、これは・・・!?」
そうして資料についてを何の気なしに見ていく銭形だが、その中身を見ていくにつれてたまらず声を漏らしそうになるのを何とか手で抑えた。
(・・・これはヤツらの主だった施設の場所もそうだが、ボスや組織のNo.2であるコードネームのラムやその他の幹部の事が調べあげられている形でまとめられている・・・ルパンのヤツ、まさか盗みに入るために調べていたのはあの組織の事だったのか・・・!?)
そしてそのまま銭形は声にはせず内心で資料の中身についてもだが、ルパンが何処に潜入したのかについてを驚きに満ちたままに考えていく・・・元々の銭形なら大声で驚きを率直に言葉にしていただろうが、今の銭形は冷静であることもだが目立たないようにと今住んでいるアパートはボロとは言わないにしても古くて防音性は然程期待出来ないため、周りに何か聞こえないようにするためだ。
(・・・いや、待て。確かに奴らの事はキナ臭くはあっても、ルパンが奴らが宝を持っているとはまず思わんだろう。奴らに限らんが宝を持っていると裏の人間達が口にするのは自分達はこんな宝を持っているのはすごいだろうと見栄やらを示して振りかざすための行為だが、奴らはそういった物を振りかざしていない。むしろそういった表にも知られかねない見栄を持つような事を避けるような奴らだから宝を持っているとはまず思えんし、仮に持っていたとしてもすぐに現金化するなりで宝自体を持って宣伝するような見栄などないだろう・・・そしてルパンもそういった機微くらいは組織に潜入して解っているだろうに、それを敢えて行った理由・・・それは、もしや・・・!)
だがそこで思考を冷静に持っていって考えを深めて組織がルパンの求めるような宝を持っていない可能性の高さや、ルパンがそれを考えていない訳がないということからある考えに銭形は至る。









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