かっさらわれる獲物と突き付けられる自分本意

そんな銭形の様子に上層部はルパンを追うのをこちらが止める気は今更ないが、その代わりに組織に関しては関わることは許さない・・・とハッキリこれで話は終わりだというように強く言ったのだが、そこで銭形は意を決した表情になった上で組織を壊滅させるまではルパンを追うことは止めるので、組織を追う面々に加えてくれと切り出した。

銭形らしくないどころではないまさかの申し出に上層部の面々は揃って信じられない物を見るような顔を向けたが、銭形は確かにルパンを追うことを止めたくないがそれでもここまで話を聞いてしまった以上は何も聞かなかったことにするなんて事にはしたくないし、あいつ以外にも犠牲になるかもしれない誰かを出したくないからだと告げた。

・・・この辺りは銭形のルパンに対する執念はともかく、銭形の善の人格であったり場合によってはルパンの逮捕より優先すべきことを優先するだけの考えの切り替えが出来て、そちらを選ぶことが出来るくらいには分別があることを把握していなかったが故である。ルパンに対する外から見た際のイメージがイメージなだけに、下手をすれば人の命がかかっている最中でもルパンの事を逮捕するために行動を起こしかねないというイメージがあった為に。

ただそういった銭形の言葉を受けはしたものの、いざルパンが現れたとなってそれで約束したことなどすっ飛ばしてしまうようなことになれば意味はない・・・そういうように上層部の面々は本当に組織の事に関わりたいならといくつかの条件をつける上で、一番最初に言われた条件は銭形当人が言ったように組織を壊滅させ終わるまでルパンが現れようが絶対にルパンの方に向かうな、それが出来ないか破ったならもう組織の捜査はさせない・・・と言われたことに、銭形は迷わず覚悟を決めた表情で頷いたのである・・・


















(・・・組織の息のかかった会社の一つはここ、か・・・いざとなりゃ切り捨てる予定だとは言え、随分と豪勢な事だ・・・貸しテナントだっていうのを差し引いてもな・・・)
・・・起床して身支度を整えた銭形は自身のトレードマークとも言えたカーキ色のコートと帽子を身に付けず、サラリーマンのようにピシャリとした形でスーツを着て鞄を持ちながらとある会社の前を歩いて立ち止まることなく通り過ぎる。だがただ通り過ぎるように見せるその中で銭形は内心では鋭く敵意を浮かべていた。末端とは言え組織の拠点だと認識しながら。






・・・ICPOの上層部に条件をつけられた銭形だが、その条件は一つだけではなかった。その複数ある条件の中で特に特徴的な物が何かと言えば、銭形にはICPOの捜査官と名乗ることはせず、トレードマークのカーキ色のコートと帽子は身に付けず過ごすようにしてもらうというものだった。

これに関しては他の条件の中にあるが、銭形が日本限定で活動することになったからだ。組織の拠点は日本以外にも無いわけではないが、日本に拠点が多いことや幹部もその数に伴うように現れやすいことから、純日本人である銭形なら日本にいても普通に見られるだろうことや何か組織の核心に繋がる何かがあるのではないかという推測からである。なのにそこでICPOの銭形ですと普通に名乗ったり、見た目からして何か一般人とは言いがたいような服装で目立つのは望ましくないからそう告げられ、銭形も次に続く条件の中の理由もあって了承を返した。

そして次に続く理由というか条件は、銭形には組織へ入り込むスパイとしての役割にはつかせないとなった。これに関しては大きな理由が二つあって、銭形当人の性格から後ろ暗い組織の活動に対して様々な意味で我慢がきかないだろう事もそうだが、何より銭形がルパン専属の捜査官として活動し過ぎたことにあった。









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