かっさらわれる獲物と突き付けられる自分本意

その報せに銭形はすぐにICPOの本部に突っ込んだ。その友だった存在について何があったのかを知るために。だがその時にICPOの上層部からは詳しい事情は教えられないと答えられた。理由としてはどういうことが原因でその人物が死んだかを銭形に伝えると原因の存在に突っ込みかねないこともそうだが、何より原因については関係者以外に口にするだけでも憚られる存在だということからだと。

そんな言葉に最初こそは銭形もそんな犯罪者についてを何故隠すようなことをと食って掛かったのだが、上層部から言える範囲で何でなのかを聞いていくと次第に銭形は苦い顔を浮かばせるしかなかった・・・上層部が言うには巨大な犯罪組織があってそこにスパイとしてその人物を潜り込ませていたが、スパイであったことを見破られて自分が殺される事になることを悟って連絡をされた。そしてその連絡で最後にいたとされる場所近辺を調べてみれば死体と壊されていた携帯があったが、それでその犯罪組織に対して報復を取ろうにも用意がないままにそんなことをしても、その組織はとかげの尻尾を切るような形でスパイをしていた人物の関係していた施設を放棄及び破壊や焼却をして逃げるで済ませるのが常套手段であって、すぐに別の所に拠点を移すなり作るなりしてまた勢いを取り戻すし、下手に何の考えもなしに組織の人間についてを公表しようものなら手段を問わない報復行動・・・それこそICPOの人間を無差別に狙って襲撃に来ることもそいつらならやってきたことから有り得ない訳ではないと。

そんな話を聞いて流石の銭形も自分なら撃退するばかりか逆に捕まえてやると言い返すことは犠牲になるのが自分以外になるなら取り返しがつかないことになると考えて出来なかったし、それらの話にそれだけの驚異がその組織にあるのだと理解したのだが更に上層部からの話は続いた・・・その組織を潰すには末端の構成員や失っても構わない拠点を一つ一つ潰すのではなく、組織の頭や幹部連中を逃がす間もなく摘発もしくは始末しなければ何度でも復活しかねない。けれど頭どころかNo.2の位置にいる幹部すら正体は誰なのかどころか、居場所はどこなのかも判明していない・・・そんな中で組織を壊滅させる為の行動などとても出来るはずがないが、犯罪組織をずっと放っておくわけにはいかないからそれをハッキリさせるためにスパイとして潜り込んでもらっていたのだが見付かってしまったのだと。

そしてそこまで上層部の人間が話した上で銭形にこういうように言った・・・死んだ仲間の為に怒りを覚えること自体は一向に構わないが相手が相手な為に慎重を期して動かないといけないことが第一の前提条件であるため、ルパンを相手にした際の銭形の様子を見る限りでは率直に言ってそんな冷静さを期待出来ないこともそうだが、もし仮に組織の壊滅の為に動きたいなどと言ってもルパンが現れたからこれまでのように組織についてをほったらかしにしてルパンを追い掛ける・・・なんて事を今までのようにされてはかなわないから銭形にはこの件に関わって欲しくはないと。

その時は銭形も自分も奴の為にその組織の壊滅に尽力すると強く切り出した。そんな組織放ってはおけないと。だが上層部はICPOとしてはルパンより遥かに悪質さの度合いが強い組織の方を優先したいのに、いざというときになってルパンの情報が入ったらルパンの捕縛の方を大事にして、組織の事を知ったことかと放り出しかねない銭形を捜査に入れたくないとハッキリ告げた。今までの銭形のルパンに対しての活動の仕方を考えれば周囲の制止を振り切って暴走するのは大いに有り得ると見た上で、そうなってしまって組織を取り逃したなら今までの苦労もそうだが犠牲も無駄になることもそうだが・・・以降も複数の犠牲が出ることになれば、様々に目をあてられない事態になるから捜査には参加させないと。

そこまで聞かされて流石の銭形も絶句せざるを得なかったが、ルパンに対する執念を認めていると同時にその執念に悩まされた時期もあったからこそだと返された事に苦い顔を浮かべてしまった・・・実際にルパン専属の捜査官となる際もだが、なった後でもルパンを追うことを諦められないと関係した者達にその執念を見せ付けて捜査官としての立場を確保し続けてきた事を考えれば、ICPOの上層部が自分のルパンへの執念を認めると同時にそれだけルパンだけにしか考えを行かせてない男なのだと思われていたのだということに。









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