いつかを変えることの代償 終幕(後編)

・・・小五郎と明智が先程の事について話をしているその一方の同じ時間で、優作もまたある人物と対面していた。






「フフ・・・まさか貴方まで逆行しているとは思いませんでしたよ、工藤優作さん。まさか明智警視達を変装して追っていたら、あぁなるとは思っていませんでした」
「・・・正直、あまりこうして会いたくはなかったのですがね・・・」
・・・薄暗い蛍光灯の灯りしかない夜の公園で対峙するような形で話をする高遠と優作。だが表情が苦く重い優作とは対照的に、高遠の表情は軽く微笑を浮かべるような物であり、精神的にどちらが落ち着いてるかなど火を見るより明らかであった。
「あぁ、そう心配しないでいいですよ。居酒屋での話の中身に関しては聞いて把握していますから、私の言いたいことの大半は明智警視が言ってくれました。後はいくつか私が言いたいことを言わせていただければそれで私は何もせずに帰らせていただきますよ」
「・・・言いたいこととは?」
「その為にも質問をしますが、警察関係者にも知り合いが多いそうですが金田一君の事についてはご存知ですか?」
「・・・貴方の関係のことも含めて多少は、と言ったところです。金田一君については新一と違いマスコミに情報が出ず、目暮警部達は担当区域が違うからと言うのもありますがあまり連絡を頻繁に取り合うような事もなかったので・・・」
「・・・ふむ、まぁそれなら説明は出来そうですね」
高遠はそんな余裕の様子で話を進めた上で金田一の事についてを聞き、優作が少しといったように返す様子に仕方無いといったように漏らす。
「大体は明智警視がおっしゃいましたが、工藤君と金田一君の違い・・・それは家庭環境が一般家庭と比べて異質かどうかもそうですが、それが異質であると自認に他認が出来ていたかどうかです」
「自認に、他認・・・?」
「自慢ではありませんが、私の育った家庭環境はろくな物ではありませんでした。物心ついた時には母は家にはいませんでしたし、父も私にろくに構うような人ではなく親子としての会話すら稀といったような方でした。そんな環境を同年代の家族についてを見てきた私は子ども心ながらに自分の家は人の家とは違うと認識して育ってきましたが・・・話を聞く限りでは工藤君は自分の家の環境は他より裕福であったり能力の高い人物がいるだけで、一般家庭となんら大して変わりはないと考えていたのでしょう。息子が成長したし自分で大丈夫だと言ったのだから、自分達は家を空けても大丈夫だと親が離れて暮らす環境などは」
「っ!・・・それは・・・」
それで高遠が二人の違いについては何かと口にした上で自分の家庭環境及び優作達の行動についてを盛大に皮肉を聞かせた声を向けると、優作は言葉を詰まらせ視線を背ける。
「明智警視の話から多少は自覚は出来たようですね?それがいかに普通の家庭から見ればおかしなことかは・・・その点で言えば金田一君はお爺さんが金田一耕助という名探偵であり謎を解くための能力こそはお爺さんから色々と教えられたことにより身に付いたようですが、それはあくまで探偵になるようにとの英才教育をしたからではなく祖父が孫に面白い物を教えると言った程度の物だったそうです。そしてそんなお爺さん以外の金田一君の両親については失礼という見方もあるかもしれませんが、至って平凡なサラリーマンと普通の主婦といった夫婦で、探偵に謎解きと言った物とは全く関係無い中流階級の家庭でした。そんな金田一君は自分のお爺さんが金田一耕助であるという自覚があることと何やらキナ臭かったり妙な謎が自身の近くで起きる時以外は、成績が良くないのが特徴なくらいの普通の学生です。そんな環境であれば一般の人と同じ感覚を持つのはさしておかしくはないですし、謎解きの点以外は普通の人と大して変わりはないと自覚はなくとも自認はしていたと思われますよ」
「・・・そこまで新一と金田一君との差が明確に出ていた、というのですか・・・そしてその原因は、他ならぬ私達だと・・・」
「えぇ、その通りです」
その様子についてをあからさまに内心を見抜いたと言ったように口にした後に金田一についてを話していく高遠に、優作が新一を一般人の感覚から遠ざけたのかが自分達の責任であるという考えに辿り着いたといったように声を漏らすと即答で頷く。









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