いつかを変えることの代償 終幕(後編)

「・・・すみません毛利さん。色々と毛利さんにとって聞きたくないことを言ってしまって」
「・・・確かに聞いてて気持ちが良くねぇって思ったのは事実だ。だがどうして優作さんと会った時からあんな風だったんだ?いつものオメーらしくねぇじゃねぇか」
そこで少し気を落ち着かせたように頭を下げて謝る明智に首を横に振って小五郎は何故と問う、あそこまで普段と変わった理由についてを。
「・・・工藤君の身内に対する安穏さが工藤さんから受け継いだ素養と感じたからあぁ言ってしまったんです。毛利さんが苦しむに至った大本だと思ってしまって」
「大本って・・・」
「工藤君の人格に考え方の方向性を定めたのは、親である工藤さんの育て方です。その点では奥さまである有希子さんも工藤君の事を確かに育ててはいるでしょうが、どちらが工藤君の人格形成に影響が大きかったのかと言えば間違いなく工藤さんの方でしょう。趣味嗜好に選んだ仕事に性格・・・どれを取っても奥さまである有希子さんより、工藤さんの方が大きいと言っていいかと思います」
「・・・まぁ有希子ちゃんの影響を受けてこれが好きになったなんて物はパッとは思い付かねぇな。確かに」
明智がその理由を新一に影響を与えた大本だと言う傍らで新一にいかに影響を与えたのかを有希子とどちらが大きいかを口にし、小五郎もそれに納得する。有希子の影響より優作の影響の方が新一の人格形成に大きいだろうと。
「そしてそんな工藤さんの影響を多大に受けた工藤君が起こした行動とそれに伴われた結果について、工藤君共々工藤さんは毛利さんを始めとした周りの方々への影響は大したことはないと思っていた・・・それが私には気に入らなかったのです。更に言うなら工藤君の危険についてまでもをさして考えていなかったことが」
「あぁ・・・まぁ自分の子どもの危険についてを考えてねぇってのは、な・・・」
明智はそんな新一の育て方もそうだが危険についても考えてなかったことが気にくわなかったと告げ、小五郎もその点に関しては否定を返せなかった。自分の立場に置き換えて言うなら、蘭が場合によっては死ぬと言う物だった為に。
「・・・ただそう言ったことを言ってしまい、毛利さんからして気分の良くないことを言ったことに変わりはありません。ですのでもうこれで私と会いたくないと言うのであれば、以降はもう会わないと言ってくれて構いません」
「いやいやいや・・・そこまで言うことじゃねぇだろ」
「・・・毛利さんにとってあまり気分が良くないことだったというのは承知の上で言ったので、それくらいは覚悟していたのですが・・・」
「あ~・・・そいつは否定はしねぇよ。でもな、だからってダチが俺の事を考えて言ってくれたって分かることを全部否定するほど俺は薄情じゃねぇつもりだ」
「・・・まだ私の事を友だと呼んでくれるのですか?」
「ま、人がいいだとかって言われそうな気もするが・・・それでもダチの為に言いてぇ事があるのはねぇわけじゃねぇし、オメーが悪意を持って優作さんにあんなこと言った訳じゃねぇってのは数年の付き合いで把握してるからな。それに優作さんとまた交流するって流れになったら、俺じゃあんな風に考えられなかったろうし断ることが出来たかっつーと怪しいもんだったしな・・・ま、何が言いてぇかって言ったら俺からすりゃ別にダチを辞める程じゃねぇって事だよ」
「・・・そう言っていただけるとありがたいです」
しかしそこまで来て明智自身も今までの事を言い過ぎたといったように謝罪を向けるのだが、小五郎が気にしてないとは言わずとも笑顔を向けて大丈夫と言ったように返す姿に明智もまた微笑を浮かべて返す。小五郎の懐の深さに安堵するように。









.
11/19ページ
スキ