いつかを変えることの代償 終幕(後編)

「毛利さんからして聞きたくないと言うことは承知で申し上げてはいます・・・ですが工藤さん夫妻は親としての自覚という物が無いとは言わないにしても、相当に薄いと言わざるを得ないと私は思っています。特に工藤君に対しての放置の姿勢はそれこそ育児放棄と言っていいくらいにです」
「明智がそう言う気持ちは分からねぇでもねぇ。実際に俺もそう思っちまったからな・・・ただ俺としちゃあそこまで優作さんが何も言えなかったのが意外だったんだが・・・あの人なら何だかんだで、反論じゃないにしても少しは何か返すと思ったんだが・・・」
「それは先の話の延長線のようなことを言いますが、工藤さんが多少のトラブルはあったものの大抵思い通りに事が進んできたからでしょう。そういった点では工藤君の運回りであったりは工藤さんと似たのでしょうが、だからこそ上手くいかない事に対しての免疫は無いに等しいんです。自らが追い詰められることなど想像もしていない上、自分が正しいと信じていたものですからね」
「・・・言われて初めて気付くことがあるってのは知ってるつもりじゃあるが、優作さんもそんな状況だったってことか・・・」
明智は一応は申し訳無いとはいったように言うものの優作に対して辛辣な考えを続けて述べ、小五郎は優作があまりにも優作らしくなかった事についてを聞くのだがその答えになんとも言いがたそうに表情を歪める。
「ただこれからはそれも多少は改善はされるでしょう。工藤さんからして色々本意でなかったり奥さまの手綱を握るのが難しくはなるでしょうが、それでもあれだけ言った上で首を縦に振ったのですから工藤君の事を放っておいて気ままな暮らしに再び移行することはないでしょうし、蘭さんと結婚したとしても多少なりにも彼らの夫婦関係の持続に尽力はするでしょう・・・ただそれが上手くいくかはまた別でしょうが」
「・・・優作さんもそうだが、有希子ちゃんがいても上手くいかないかもしれないってのか?」
明智はそんな優作の行動の改善はされるだろうと言いつつもいい結果には必ずは繋がらないと言い、小五郎は怪訝そうに視線を向ける。
「結婚に関しては当人達同士の感情を始めとした問題が大きいのもありますが、だからこそ工藤君をお二人がどう御するのかが重要になります・・・ですが成人して探偵としての自信と立場を確立し、事件を解決することが第一と家庭を省みなかった工藤君が蘭さんの為にも家にいろと言われて素直に頷くと思いますか?」
「あ~・・・確かにそれを言われると、新一がそうするなんて思えねぇな・・・特に優作さんの事を新一は嫌ってたってことはねぇが、優作さんが言ったら意地になって自分達は大丈夫って言うタイプだったしな・・・」
「えぇ、実際に私もそうなるだろうと予想しています。ですからそこから先はもう工藤さん達の努力次第です・・・工藤君の手綱を握り、蘭さんの機嫌を損ねないようにさせるのは」
「・・・そこは優作さん達を信じるしかねぇか・・・今までの話を聞くと、どうなるかあんまりいい予感はしねぇけどな・・・」
明智はその理由を新一の我の強さが主だと言った上で優作達次第と言うと、小五郎は不安を拭いきれないと言ったように漏らす。今まで揺らいでいなかった優作達への信頼が先程の優作との再会と、今の明智の話で絶対に大丈夫だと思えなくなった為に。









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