人の愛も仮面も変わるもの

「・・・別居してから蘭に孫との生活に関しちゃ特に問題はねーっていうか、時々頼りにしてきた蘭や孫が近くにいるだけだって風な感じだったから問題はなかった。むしろ俺も英理も近くに二人がいるなら何かあっても手助け出来るし孫とも時間をじっくり取れると思ってたから、新一との仲に関しちゃほとぼりが冷めるまでゆっくりすればいいって思ってた・・・だがそうして二人を迎え入れて生活する中で新一がどういう風に生活してたのかについても聞いたんだが、変わりなんかほぼほぼなかったみたいな事を聞いたんだよ。そしてその変わったことについても精々飯についちゃ蘭がいないから外食で済ませるくらいだったり、家の掃除や洗濯なんかはハウスキーパーに頼んだ・・・みたいな感じで、正直蘭や孫がいなくても何の問題もないし気落ちだとかも一切してない様子でな」
「・・・それは・・・」
「言いたいことは分かる。新一がそんな風に振る舞ったのはあいつからしたら蘭や俺達に対して一人になったからって、それで弱った姿なんか見せてられないって気持ちからだろうってことは。ただそういった事を聞いたり姿を見た時に俺達は揃って思ったんだよ・・・新一はそんなことはないと否定するだろうが、別に新一は蘭達が家にいなくても問題なんてないんだろうってな」
「・・・俺も工藤のことは少なからず知っていますが、事件の時はもって回った言い回しやら芝居がかった振る舞いはしても、それ以外の時での工藤は基本的に嘘をつく時は慣れてしまえば分かりやすい形の嘘しかつけなかった・・・だから毛利さんから見れば工藤が嘘や意地から言った物でも何でもなくて今の生活は本音から苦しさなどないと見た、ということですか・・・」
「そういうことだ・・・」
小五郎はそのまま手をどけることなく別居してからどのような事があって、どのように新一を見たのか・・・それらを語っていった中身に明彦も納得し、荒垣も苦み走った顔を浮かべる様子にガックリと顔を下に落とす。そんな姿に二人は同情の視線を向けてしまう。






・・・このように新一が嘘をつけないといった話をする三人だが、新一は演技力はあることはあるし嘘をついて小五郎達を長い間騙していたという実績もある。しかしそれでも三人が嘘をつけないと言い切るのは何故かと言えば、新一からして必要ではない嘘というか推理や謎の絡まない人間関係において駆け引きめいた事はしない人間だという認識があるからだ。

その長い間騙していた時に関してはとある特殊な事情から嘘をつかれると疑われるような状態ではなかったので除外するが、今の新一からして蘭や小五郎達との人間関係に関して嘘をつくことだったり誤魔化すようなことをする必要などない。ましてや新一は蘭達の気持ちとの差異についてを大袈裟だとか大したことないと断じている・・・そんな新一が嘘をつく理由などないと小五郎もそうだが、頻繁には会わないとは言え二人もそういった性質があることを知っていたからこそ小五郎の言葉が正しいと確信していた。

そしてだからこそと言うべきであるが・・・今目の前で顔を落としている小五郎の態度から、小五郎だけでなく英理達も相当な気持ちになっているのだと二人も感じたのである。









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