人の愛も仮面も変わるもの

「それでまぁ蘭がそんな風にほとんど子育てやら家事やらをおじ様達を頼りにすることは出来るけど、新一君側からの手がほとんどないままやることについて愚痴られてるって訳です・・・何度言ってきても新一は変わらないし、これからもこんなことが続くようなら二人目を作ることを考えられないどころか、結婚してる意味も感じられなくなってるって」
「結婚している意味も、だと・・・あの毛利が、か?」
だがそうして園子が続けた中身の総括の中の一言にたまらず美鶴は驚きを隠せずに漏らした・・・蘭が新一の事を一途に好きだというのを見ていたからこそ、結婚自体を続けられないという言葉が出てくる言葉が出るとは思っていなかった為に。
「そこについては私も驚いたから詳しく聞いてみたんですけど、今言ったように子育てに家の事をほとんどしないってことに加えて他にも色々理由があって・・・それをまとめると蘭からしたらもう家は新一君が安らげる場所だったり守るべき場所なんじゃなくて、単に仕事がない時に待機だったり休める場所みたいにしか思っていないんじゃないかって感じるようになったらしいんです。その上で何時に依頼が入ってもいいようにリラックスっていうか、お酒も薦めても車を運転する可能性があるだとか判断力を鈍らせないためにも飲まないって言ったり、その・・・蘭が夫婦の営みをしようと切り出しても依頼で疲れているとか、いつ依頼があってもいいようにって子どもが生まれてから数える程しかしてないらしいんです・・・」
「それは・・・」
そう蘭が思った理由は何なのか・・・それらについてを話していく園子なのだが、最後に複雑そうで言いにくそうに切り出してきた話題についてに、美鶴も何と言っていいものかというよう声を詰まらせた。
「美鶴さんがそうなるのは分かります・・・まだ高校生くらいの頃だったらそういった事を自分から相手に切り出すなんてって思ってましたし、男性の方からエスコートしてもらいたいっていう考えでした。でも結婚して大人になったからこそそういった行動は夫婦の間ならしてもおかしくない行動だってなる上で、女性から色々理由があるって言っても誘うことは普通になりますから・・・でも蘭は子どもが出来た後からそういった理由で求められなくなって、そんな少ない休みの機会に誘ってようやくって形で新一君が応えるくらいらしくて・・・」
「・・・工藤からすれば毛利を蔑ろにしてないどころか、むしろ大事にしているつもりなんだろう。子どもも出来たし、抱きたいという気持ちで毛利を抱くというのは良くないという考えから。無論どちらからでも無理矢理はダメだが、夫婦として想いあうならばこそ相手が求めるであったり求めたいなら出来る限り意志を尊重するのは必要なことだ。それが出来んとは何をしているんだ、工藤は・・・」
更に園子は大人になったからこそ女性からでも誘うことはあることだと言い、美鶴も同意しつつ盛大に新一に対する呆れで頭を手で抑える。






・・・高校生の頃の園子は一見すればイケメン大好きで男に体を許す事に抵抗がないと思わせるような軽い言動が多かったが、その実としては貞操観念に関してはむしろ同年代の女子よりも固かった。これは園子が財閥の人間としてそういった貞操観念についてちゃんと持つように育てられた部分もあるが、実際の所の当時の園子は単に自分がイケメンと並んでカップルになりたいという気持ちが先走っていたから軽い言動が多かったのである。

ただそんな風にしていた園子だが夫である真と結婚して時間が経ったことで、そんな言動は影も形も見られなくなった。これは園子が大人として成長したこともあるが、真の夫としての立ち居振舞いに園子が満足しているからである。夫婦としての夜の営みに関しては真からは性格的に積極的に行おうと言い出すことはそうはないが、それでも園子が求めるであるとか雰囲気がそうなっていると理解したならそういう行為を行っていた。

そして美鶴も結婚していてその相手である明彦も真と同じタイプであり行動も似たような物の為、夫婦生活に関しては不満はない・・・ただとある事情が美鶴と明彦にはあるが、そこに関しては置いておく。重要なのは夫婦生活に満足している園子と美鶴からすれば、蘭と新一の関係が歪な物だという認識だ。









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