いつかを変えることの代償 終幕(後編)
「今の貴方とその能力なら前世の知識に前に出していた作品をそのまま思い出しつつ、同じように今回も出すことなど容易い事でしょう。その分の時間も出来るでしょうから、家や工藤君達に構えなかったなどという言い訳も通用しませんよ」
「っ・・・分かりました、出来るだけ家にいるようにします・・・それと新一達の事についても気にかけるようにします・・・」
更に追撃とばかりに優作の能力まで盾に取ってきた明智に、最早頷かずにはいられないと優作は観念したように首を縦に振った。この話題を早く終わらせたいといったように。
「・・・そう言ってくださるのでしたら構いませんが、最後に改めて言わせていただきますが毛利さんはもう米花町に戻ろうとも工藤君達に進んで関わろうとも考えてはいません。ですのでこれ以降は不慮の時は仕方ないにしても、積極的に近付くことはないようにお願いします」
「はい、それは・・・」
そして最後の仕上げとばかりに小五郎への接触をしないように念を押す明智に、優作はもう抵抗する気力もないとばかりの様子で頷いた。
・・・それで話も終わりということで小五郎達は店を出て優作と別れたのだが、小五郎は自分の自宅兼事務所に明智と向かった。
「明智よ・・・あそこまで優作さんに言う必要はあったのか?」
「えぇ、当然です。と言うよりは先程の会話で確信しました・・・工藤さんに奥さまは根本的に一般的な人の親としては向いていないということを」
「優作さんに有希子ちゃんが・・・?」
・・・それで事務所のテーブルを挟んで対面越しに話を切り出す小五郎だが、明智の思わぬ返しに眉を寄せる。二人が親に向いてないと。
「一般的な親は仕事があって家を空ける時間が多いとは言え、それでも子どもと共に住まう家を基本的な拠点として過ごして子どもとの時間を作る物です。私の父は口数が少なく堅物でこそありましたが、それでも家にいる間は私の相手もしてはくれました。ですが工藤さん夫妻は工藤君がある程度自分の事が出来ると判断して、奥さまと家を出て気ままな旅行暮らしに入ったと言います。これは工藤君が子どもの割にはしっかりしてて使えるお金を入れていたという点を踏まえても、ネグレクト・・・育児放棄と見られてもおかしくはない行為です」
「育児放棄・・・」
それで自分の事も交えて工藤夫妻の取った行動が育児放棄だと言う明智に、小五郎はその言葉に否定を返さずただ反芻するように声を漏らす。
「この件に関しては工藤君の周りの環境が整っていたこともあって、大事にならなかったのが大きいでしょう。蘭さんという世話焼きの幼馴染みに阿笠博士という気心知れた隣家の住民に、他の方々の手助け・・・もしそれらの方々がいなければ工藤君の生活の質は明らかに下がっていたでしょう。話に聞く工藤君の性格なら家の掃除に食事の支度と言った家のことを率先して行うとは思えませんからね」
「まぁそこは否定出来ねぇな・・・新一は確かに料理とかにも知識こそはあったが、だからってそれを実行に移すような奴じゃなかったし、推理の事があるならそういったもんは二の次三の次って奴だったからな・・・」
そしてそう見られなかったのは周りの環境にあると言う明智に小五郎は納得する。新一は推理優先で家庭的な事に対して積極的な人物ではないと。
「えぇ。工藤夫妻はそういった周囲の助けが工藤君にあるから大丈夫だと考えたのでしょうが、そんな周囲に自身の子どもの助けを勝手に願い自分達が楽しむために長い間家を空ける行為が、全うな親の取る行動として正しい・・・そう毛利さんは思えますか?」
「・・・優作さん達の事を悪く言いたかねぇが、そういった風な言葉として聞きゃ確かに正しいとは思えねぇな・・・というかそういう計算に蘭も含まれてたって思うと、複雑だぜ・・・」
「意図的に蘭さんを利用しようとしたり計算に含んだという訳ではないでしょうが、だからこそタチが悪いんですよ。自然にそういったことを考え、自然にそう思ったような流れに行く・・・そしてそれで上手くいき、良くない流れになったことがない。だから周りもそれが正解だと思い、問題としない。そういった風潮になってしまう為に」
「だからネグレクトに育児放棄だって話にならなかったって訳か・・・」
そしてそんな新一を周りが助けることを半ば当然の物と考え、自分達の為に家を長い間空ける・・・それがいいことかと問う明智に流石に小五郎も苦い顔で首を横に振り、更にナチュラルに考える事が上手くいくことの影響の問題点を口にされると思わず頭を抱える。明智の話を聞いてしまった今となっては、工藤夫妻の行動が育児放棄と否定出来ないと感じた為に。
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「っ・・・分かりました、出来るだけ家にいるようにします・・・それと新一達の事についても気にかけるようにします・・・」
更に追撃とばかりに優作の能力まで盾に取ってきた明智に、最早頷かずにはいられないと優作は観念したように首を縦に振った。この話題を早く終わらせたいといったように。
「・・・そう言ってくださるのでしたら構いませんが、最後に改めて言わせていただきますが毛利さんはもう米花町に戻ろうとも工藤君達に進んで関わろうとも考えてはいません。ですのでこれ以降は不慮の時は仕方ないにしても、積極的に近付くことはないようにお願いします」
「はい、それは・・・」
そして最後の仕上げとばかりに小五郎への接触をしないように念を押す明智に、優作はもう抵抗する気力もないとばかりの様子で頷いた。
・・・それで話も終わりということで小五郎達は店を出て優作と別れたのだが、小五郎は自分の自宅兼事務所に明智と向かった。
「明智よ・・・あそこまで優作さんに言う必要はあったのか?」
「えぇ、当然です。と言うよりは先程の会話で確信しました・・・工藤さんに奥さまは根本的に一般的な人の親としては向いていないということを」
「優作さんに有希子ちゃんが・・・?」
・・・それで事務所のテーブルを挟んで対面越しに話を切り出す小五郎だが、明智の思わぬ返しに眉を寄せる。二人が親に向いてないと。
「一般的な親は仕事があって家を空ける時間が多いとは言え、それでも子どもと共に住まう家を基本的な拠点として過ごして子どもとの時間を作る物です。私の父は口数が少なく堅物でこそありましたが、それでも家にいる間は私の相手もしてはくれました。ですが工藤さん夫妻は工藤君がある程度自分の事が出来ると判断して、奥さまと家を出て気ままな旅行暮らしに入ったと言います。これは工藤君が子どもの割にはしっかりしてて使えるお金を入れていたという点を踏まえても、ネグレクト・・・育児放棄と見られてもおかしくはない行為です」
「育児放棄・・・」
それで自分の事も交えて工藤夫妻の取った行動が育児放棄だと言う明智に、小五郎はその言葉に否定を返さずただ反芻するように声を漏らす。
「この件に関しては工藤君の周りの環境が整っていたこともあって、大事にならなかったのが大きいでしょう。蘭さんという世話焼きの幼馴染みに阿笠博士という気心知れた隣家の住民に、他の方々の手助け・・・もしそれらの方々がいなければ工藤君の生活の質は明らかに下がっていたでしょう。話に聞く工藤君の性格なら家の掃除に食事の支度と言った家のことを率先して行うとは思えませんからね」
「まぁそこは否定出来ねぇな・・・新一は確かに料理とかにも知識こそはあったが、だからってそれを実行に移すような奴じゃなかったし、推理の事があるならそういったもんは二の次三の次って奴だったからな・・・」
そしてそう見られなかったのは周りの環境にあると言う明智に小五郎は納得する。新一は推理優先で家庭的な事に対して積極的な人物ではないと。
「えぇ。工藤夫妻はそういった周囲の助けが工藤君にあるから大丈夫だと考えたのでしょうが、そんな周囲に自身の子どもの助けを勝手に願い自分達が楽しむために長い間家を空ける行為が、全うな親の取る行動として正しい・・・そう毛利さんは思えますか?」
「・・・優作さん達の事を悪く言いたかねぇが、そういった風な言葉として聞きゃ確かに正しいとは思えねぇな・・・というかそういう計算に蘭も含まれてたって思うと、複雑だぜ・・・」
「意図的に蘭さんを利用しようとしたり計算に含んだという訳ではないでしょうが、だからこそタチが悪いんですよ。自然にそういったことを考え、自然にそう思ったような流れに行く・・・そしてそれで上手くいき、良くない流れになったことがない。だから周りもそれが正解だと思い、問題としない。そういった風潮になってしまう為に」
「だからネグレクトに育児放棄だって話にならなかったって訳か・・・」
そしてそんな新一を周りが助けることを半ば当然の物と考え、自分達の為に家を長い間空ける・・・それがいいことかと問う明智に流石に小五郎も苦い顔で首を横に振り、更にナチュラルに考える事が上手くいくことの影響の問題点を口にされると思わず頭を抱える。明智の話を聞いてしまった今となっては、工藤夫妻の行動が育児放棄と否定出来ないと感じた為に。
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