塗り固められた嘘が暴かれた時

「・・・今のキッドの事に関しては私は考えていなかったけれど、別の事としてテレビ関係者も沖野さんを始めとして顔を合わせている人は何人もいたから、もしかしたらまた『江戸川コナン』君にテレビに出てもらいたいけど、行方が分からないから探してみよう・・・みたいなことになっていた可能性もまた否定出来なかったでしょうね」
「そっ、そんな・・・!」
「私も博士も優作さん達もだけど、何より工藤君・・・貴方自身自分達は慎重に身を隠してるだとか秘密に出来てるだなんて思ってただけで、その実としてそれが出来ていなかったというか・・・『江戸川コナン』はどうせいなくなる存在だから役目を終えれば皆忘れてくれると、考えることもないというか勝手に思っていただろうということよ。自分達からしたら『江戸川コナン』は必要ないんだから周りもそうしてくれるとね」
「「「「っ!?」」」」
灰原はそんな降谷達から話を引き継ぐようにして話を進めるのだが、『江戸川コナン』についての話を聞いて一斉に新一達は言葉通り考えていなかったということを突き付けられた事に驚愕の表情を浮かべた。






・・・『江戸川コナン』はあくまで小さくなった新一の仮の名前や立場であって、新一は『江戸川コナン』ではない。それは新一当人もそう考えているが優作達を始めとしたその正体を知っている者達からしてもそうであった。あくまでも『江戸川コナン』は新一が小さくなった事から周りを色々と誤魔化す為のキャラ付けであって、新一当人に優作達からすれば新一であることには違いないのだからと。

しかし新一を新一として見ている面々と違い、そんなことを知らないまま『江戸川コナン』として接していた面々からすれば『江戸川コナン』は新一ではなく『江戸川コナン』でしかないし・・・歩美達からしたらむしろ新一ではなく、『江戸川コナン』の方に断然に思い入れがあるのである。何せ少年探偵団として何度も何度も事件に『江戸川コナン』と共に解決したり、帝丹小学校でも普通に『江戸川コナン』と友達として仲良く過ごしていたのだ。そこに『工藤新一』と仲良くしていたなんて意識は歩美達に一切ないのは、阿笠に『江戸川コナン』についてを言ってきた事から明らかだ。

その上で歩美達だけではなく他にも『江戸川コナン』になってから出会い交流してきた人は何人もいて、話に出てきたような沖野を始めとした有名人やら財閥の人間やらと立場的に『江戸川コナン』の事を追える人物もまた多くいた。そう考えればもしもそういった人物から何かのきっかけ一つで『江戸川コナン』の事が明るみに出ていた可能性は決して否定出来ない物であった。何らかの形で『江戸川コナン』を求める人が出てきたのではないかという可能性は。






「貴方達・・・特に工藤君からすればずっと『江戸川コナン』で居続けるようなつもりはなかったからとか、自分やこの子は『工藤新一』なんだという認識や自負があったんでしょう。でもだからこそそんな工藤君が築き上げた上で役割を終えて見切りをつけた『江戸川コナン』という存在が意志を持ったかのように、工藤君やその周りに弓を引くような結果になったんじゃないかと今なら私は思うのよ・・・役目を終えたというならちゃんと自分の存在を消すように動くようにしろというのもそうだけど、『江戸川コナン』としてハッキリ人格として独立したもう一人の貴方が勝手に自分の事を終わらせるなというよう、おじさん達の事を次々と今明らかにしていってるんじゃないかとね」
「「「「っ・・・!」」」」
そんな反応から灰原はまるでといったように用済みだとされた『江戸川コナン』が意志を持ち反抗しに来たのではというようにらしくもなく例えて言葉にするのだが、新一達は大袈裟と否定することなど出来ないとばかりに息を呑むしかなかった・・・新一の人格を考えれば自分が用済みだからと捨て置かれるようなことなど認められる筈もないだろうし、実際にちゃんと対処しなかったからこそ『江戸川コナン』が牙を向かせてきたかのように様々な事が起きた事から一概に否定出来ないと。









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