塗り固められた嘘が暴かれた時

「ただそうするってんなら、英理に蘭を受け入れてもらうことが必要になるが・・・どうだ、英理?」
「そうね・・・この数日で蘭と貴方の事について話し合ったのだけれど、今の話を聞いたのもあってもうこのまま蘭は私が引き受けるわ」
「えっ!?お、お母さん!?」
しかし小五郎はこれは英理次第だと視線を向けて問い掛けるが、そうするとの返しに蘭が目を丸くして驚きを浮かばせた。
「・・・言ったでしょう。この人の事についてを話したのもあってと。その時に貴女が自分が悪いって認めないお父さんの方がおかしいと頑として認めなかったことから、もう貴女の事は私が引き受けた方がいいと思ったのよ。貴女をこの人の元に帰した所でまた喧嘩になって流血沙汰になってしまえば、私も私でどうして止めなかったのかと言われるのは目に見えている。そして今の話を聞いたからこそ言えることとして、もしこの人と一緒にあそこで暮らすのを強行してそんな風にイタズラだとか酷い言葉を向けられた時・・・貴女が怒りのままにそういった人達、もしくはこの人や周りに当たる形で空手を使いかねないという危険性を感じたからよ」
「なっ・・・!?」
「そんなことをしないと言いたいかもしれないけれど、それで我慢がきくのはそうした人までであって、貴女の性格を考えればこの人との喧嘩や物に当たるという事になる可能性についてはそんな人達に対する怒りもあって、この人や物なら問題ないと考える方向に流れるのは十二分に有り得ると見たの・・・ちなみにそう聞いて貴女はこの人もそうだけど、物にも全く当たらないなんて言えるかしら?」
「そっ・・・それは・・・その・・・」
英理がそんな蘭に自身の感じたことや考えたことを真剣に言葉にしていき、その中でどうかという問い掛けを向けると蘭は答えにくそうに言葉を詰まらせ視線をさ迷わせ出す。
「ちょっ、ちょっと英理・・・どうしてそこまで蘭ちゃんにキツく当たるのよ・・・?」
「・・・この数日でこの子が怒りのままにうちの物をいくつも壊してきたからこう言っているのよ。そしてそのほとんどがこの人や新一君関連の話題で怒りに任せて拳で破壊したから私も何度も注意してきたし、それで我慢がきかないのを見てそんな様子で大丈夫かと聞くのは当然じゃないかしら?」
「「「っ・・・」」」
その様子に有希子がたまらず蘭を庇うように声をかけるが、英理自身も怒りを感じているというようにしながら問い掛けを向けてきたことに工藤家の面々は揃って言葉を詰まらせるしかなかった。






・・・蘭が怒りだったり意見を押し通そうとする際、殴る蹴るなどを感情と共に物にぶつけることは事件の時もそうだが日常生活の中でも良くあるとは言わずとも、珍しいと言えるものではない代物だった。これは蘭が空手を習って力がついたと共に、自身の意志を是が非でも押し通したいという時にその力を見せれば丸く収まるといった事から、その味を占めてしまった・・・というのが蘭としては自覚していないが、大きなポイントだった。

しかしそうした物に当たるというやり方は小五郎が一緒に長い間暮らしていて慣れていたから続けられたのであって、英理はそんな蘭との暮らしに慣れていなかった上に物に当たりやすいという事を聞いていなかった為、一連の事についてを話した時に怒りで物に当たって壊した際に英理も何をしているのかと怒ったものであった。

ただ最初は蘭はこれくらいいいじゃないというように怒り返してその日の内はそれで終わることになったのだが、話をした時だとかその後に物を壊すその様子に英理は本格的に怒りを浮かべ、物品の修理費用の事をまず出した上で蘭に散々に説教をしたのだ。これだけ壊しておいて自分が怒りを抱いたから壊したのは問題ないだろうと暴論をぶつけるんなら、もうこれだけの金の事についてはここから出ていって二度と顔を見せないようにするなら許してやるし何も説教せずに済ませると。

そんな風に言われて金がないこともそうだがここではいサヨナラとしてしまえば、英理は本気でそうしてしまいかねない雰囲気がある・・・そういったことから蘭はシュンとなって謝る以外に無くなって謝ったのだが、そこから英理が説教を散々にしていったことから今日のこの場で小五郎に食って掛かるような意気など持てずにいたのは余談である。









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