いつかを変えることの代償 終幕(後編)

「大方の貴方の考えはこういった所でしょう。組織を潰すことは必要であり、工藤君が江戸川コナンになることもまたその過程で必要なことであると。ですがそもそもを言わせていただくなら、工藤君が江戸川コナンになった際に組織の人間に頭を殴られ薬を飲まされた事・・・薬もそうですが、頭を殴られるというのは致死の状態になってもおかしくなかったものです。なのに以前平気だったからもう一度それを受けてもらおうなどと考えるのは、とても子を想う親の心境に考えとは言えないと思いますが?」
「っ!?・・・それ、は・・・」
明智がそこで指摘したのは新一の身の危険に関する事とそれを承知の上で受けさせることが親として正しいかという言葉で、優作は途端に冷や汗を浮かべながら視線をさ迷わせる。言葉にされた物を肯定すれば肉親として非常識の烙印を押されるが、否定しようにも否定を返せないと優作自身が口にした言葉達があるために。
「・・・今こうして我々に他の方々も逆行して、既に前とは違う状態になっています。知識の豊富な貴方なら毛利さんがいない時点で既に前と違うからバタフライエフェクトのようなことが起きるのではないかと懸念しなかったのも問題になりますが、それ以上に息子を傷が付くのを予定に組み込むなど親としてどころか人としてあるまじき行為です。そういった事すらも考えられなかったのですか、貴方は?」
「・・・・・・返す、言葉もありません・・・」
更に言葉にトゲを増させていかに考えが無かったのかを口にしていく明智に 優作は身を縮こまらせて反論の余地もないと小さな声で返す。
「明智・・・もうこの辺りで済ませてやってくれ・・・色々言いたいことがあるってのは分かるが、流石に見てられなくなってきたんだが・・・」
「・・・分かりました。ですが最後に言いたいことがまだありますので、それだけは言わせてください。これは毛利さんにとってもですが、工藤さんにとっても重要な事ですので」
「・・・分かった、それで終わりだからな」
小五郎も流石にもうやめてほしいといったように声をかけるが、明智が譲歩しつつ最後に言わなければならない事があると引かない様子を見せたことに仕方無いと頷く。
「・・・工藤さん。先程貴方は工藤君の事を考えて日本に残るようにしたと言いましたが、もう組織の事がないならとまた家に奥さまと共にろくに帰りもしない生活に戻るようなことは止めてください。貴方が先程の話を真摯に受け止めるというなら尚更です」
「・・・それは・・・新一の事もですが、蘭ちゃんの為ですか・・・?」
「そうです。毛利さんの話では安室に赤井の二人だけでなく鈴木さんに宮野志保さんも逆行しているとお聞きしましたが、お二人は共通してもう工藤君の事件吸引体質と蘭さんのそんな工藤君への想いの強さに付き合いきれないと離れることを決断したともお聞きしました」
「っ!?」
「お二人について初めて知った驚きがあるのでしょうが、お二人も結婚後の二人の様子について色々考えた上での決断だとの事です。そして今からではもう工藤君達の性格に関係の改善を劇的に求めることなど、相当な事が無ければ不可能でしょう・・・となれば後にやれることは身近に信頼出来る誰かがいることだけですが、最早それが出来るのは貴方と未来の事を知らないとはいえ貴方の奥さましかいません」
「・・・それは・・・」
「貴方が息子夫婦の離婚についてあれでいいし、思うところなど何もないというのであれば放っておくのもいいと言えるかもしれませんが・・・それなら以前と同じよう、いえ以前の事を知っているからこそ、より一層に親としての責務を果たそうとしていないと貴方が自らの手で証明することになりますよ」
「っ!」
それで明智は優作に向けて家から離れることを止めるように言う傍らで優作が知らない事実と優作にとって非常に不名誉に繋がる事を口にしていき、たまらず優作は衝撃を受けて身を引いた。明らかに明智の言葉に圧される形で。









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