塗り固められた嘘が暴かれた時

『・・・実際ネットでも君も予感しているよう、江戸川コナンと工藤新一を結び付ける事に関しての論争が起こっている最中だが、ここで君にとって更に問題になるのは周りの人々の反応だ。特に毛利さんに関しては組織の壊滅の為にあの家を出てから哀ちゃんが薬を作るまで、沖矢昴が保護者となってしばらく旅行に行くと誤魔化しているとの話だったから・・・このニュースについて遅かれ早かれ知る事になった時、毛利さんが抱く気持ちや考えは決して君にとって安穏と出来る物ではないのは容易に想像がつくよ』
「っ!」
だが安室が更にまずい事が周りの人間・・・特に小五郎のことにあると言葉にしたことに、新一はそのままの様子で息を詰まらせるしかなかった。あまりにも新一にとって望ましくない想像が出来たことに。






・・・新一がここまでになるのは自分が『江戸川コナン』として名前も立場も誤魔化すばかりか、何も言わないままに唐突に『江戸川コナン』を受け入れてくれていた毛利家という居場所から消えようと思っていたからだ。それは新一からして悪意があるからといった理由からではなく、単純に新一が小さくなった経緯についてを知らせず組織と関わらせずに済ませたいと思ってだ。

だからこそ全てが終わって元の体に戻った時には『江戸川コナン』についてはさっさと後片付けをしてもうどこか自分達も知らない所にいったものとして済ませ、工藤新一として元の生活に何食わぬ顔で戻る予定だった。それが新一にとっても周りの面々にとっても穏便に済ませられると見てである。

しかしだからこそ新一は組織の壊滅が出来て元の体に戻れた事も加わって、一切考えていなかったのである・・・もし自分の事がバレたらどうなるかについてを。そしてバレたら一番まずい存在が誰なのかと言えば安室が言ったよう、『江戸川コナン』として居候として入り込んでいた家主であり組織を追うための探偵として操る形で表に立ってもらっていた毛利小五郎の存在だ。

小五郎に関して一番の問題点が何かと言えば、何と言っても推理役として自分が眠らせた上で推理をしていたことだ・・・自分が新一だとバレたことも踏まえると、小五郎が自身をどう見るかと考えると決して良くない気持ちを抱くだろうとしか思えなかったのだ。これまで自分が様々な事件を解決してきたと思っていたのが、それが何も言わないどころか嘘の名前まで名乗って自分を眠らせてそうしてきたことを考えると・・・まずいい気持ちにならないだろうし、顔を合わせた時に激しい追求が来るのは間違いないだろうと。






『・・・ただ問題は毛利さんや君の周りだけじゃない。当然テレビがこんなニュースを扱っている以上、マスコミは君や毛利さんを始めとした君の周りに取材に来るだろう。更なる情報を求める形でしつこく何かコメントを求めて事務所やら家の周りを何日でも取り囲む形でだ』
「そんなっ・・・!」
『そんなことないと否定したいだろうが、もうマスコミは動いているという情報はこちらに入ってきている。だからもう毛利さんの所や阿笠邸に人が集まってきてもおかしくない頃になっているだろうが、窓から外がどうなっているか見えるかい?』
「・・・っ、いる・・・記者の人っぽい人達が、続々と集まる形で・・・」
だがまだ問題があるとマスコミの事を言う安室から外を見るようにと言われ、慌てて隠れるように窓から外を見るように玄関の方を見ると・・・明らかに人が集まっている姿に、新一は呆然と肯定するしかなかった。本当にマスコミは自分達の事を取材しに来たのだと。









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