いつかを変えることの代償 終幕(後編)

「そういった奥さまの状況から考えれば、工藤さんに毛利さんの事を黙っておくようにといったことに関して、奥さまが協力するといった状況は望めないでしょう。むしろ毛利さんが同じ高校で同学年だと知ったなら、思い出話に花を咲かせたいと工藤君とは違った意味で突撃しかねない可能性もあるでしょうからね」
「・・・有希子の性格なら、確かにそうなるでしょうね・・・」
そんな有希子だからこそ記憶がないなら接触してくる、そういった可能性が高いと言う明智に優作は否定を返せない。有希子のフリーダムさは優作でも時として制御出来ない為に。
「・・・そういえば有希子ちゃんは一緒じゃないんですか?優作さんが有希子ちゃんと離れてってのも珍しいですけど・・・それとこの頃はもうあの家にいない頃だと思ったんですが・・・」
「・・・その事に関してですが、前にあの組織との事があったので今回は出来る限りあの家にいようと考えたんです。ただ家にずっと居続けるのも刺激がないということもありますが、何より高遠遥一が表舞台でマジシャンになっているという情報を受けてどういうことなのかと考え、一人で様子を見に来たんです・・・何か変なことが起きても有希子を巻き込まないようにと・・・」
「だからあの会場にいたって訳ですか・・・」
しかしそんな有希子がいないことと何故日本にいるのかとふと疑問に思った小五郎に、優作はその二つの問いに答えて納得させる。
「・・・色々と言いたいことはありますが、根本的な事を一つお聞きします。聡い貴方なら以前との違いから誰が逆行しているのかも少しは分かっているかもしれませんが、工藤さんは逆行した事について当初はどのように考えどう動こうと決めたのですか?」
「明智・・・?」
ただその答えから優作にどう動こうと考えていたのかとの考えについてを明智は問い、その意図がなんなのかと小五郎は疑問に眉をひそめる。
「・・・その事に関してですが、ある程度事が進むまでは下手に前と変わったことはしないようにしようと考えてきました。それまでは特に何か変えようと思っていた訳ではありません」
「そのある程度とは、工藤君が組織と相対する流れになる前後といった所ですか?」
「・・・はい、その通りです。新一があの組織と対峙しなければ、あの組織はいつまでも猛威を振るいFBIを始めとした組織も協力体制に入ることなどなかった。その事を考えれば、迂闊に過去の流れを変えるわけにはいかないと考えたのです」
「・・・成程、そういうことですか」
優作はその問いかけに自身の考えを正直に話していくのだが、明智は納得と共にシワが寄った眉間に指を当てる。
「・・・貴方の為にも言わせていただきますが、もう組織は同じように逆行していた安室と赤井の二人を中心にして完膚なきまでに潰したと報告がありました。ですのでもう工藤君が組織と相対するような事はありませんし、再度江戸川コナンに戻るような事はありません」
「そう、なのですか・・・?」
「えぇ・・・ですが貴方のその言葉を聞いてより一層感じました。親として行うべき事を行っていない事がまた増えたと」
「っ・・・!」
明智はそこから仕方無いといったように組織についてを明かすのだが、そこから更に続けられた辛辣な言葉に優作はまた苦い顔を浮かべる。また言われる事が増えたと。









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