危機感の喪失に対する対処(後日譚)

「ではまた何かあったら遠慮なく連絡してきてくれ。話を聞く限りしばらくは心配はいらないだろうが、これからも何もなく順調に行き続けるかどうかの保証はないからね」
『もしそんな時は大殿さんに頼らないようにしたいという気持ちはありますが、もしもの時はそうさせてもらいます。では失礼します』
そうして大殿はこれで終わりというように話をまとめ、小五郎もそれに倣うような返しをした後に電話を切り・・・大殿は切れたことを確認した後、電話を耳から離してフゥと一つ軽く息を吐いた。
「・・・取り敢えずこれで一段落といったところかな。隆景なら向こうと何かあったとしても対応出来るだけの能力はあるし、蘭ちゃんや新一君達も隆景がいることもそうだが隆景がどれだけ事情を知っているかを向こうが知らないことが、小五郎を含めて事件に巻き込むような事に対しての枷になるだろうからね」
そうして大殿は微笑を浮かべつつこれからも隆景という人物がいることにより、小五郎達の安全は格段に高くなるだろうと。






・・・大殿が主導してきた流れとして一貫する形で、新一達側に言ってない事は多い。その中には大殿が言ったように隆景という人物も事情を知っていながら、それを見せないようにすることを承知して動くということだ。そして隆景はそんな事をしているというような風に見せないだけの演技力に思慮深さも持ち合わせている事は大殿もよく知っている為、隆景からバレることはまずはないと見ている。

だが新一や優作達の推理力の高さは折り紙つきであるが故にバレることも十分有り得ると大殿も思っているが、その辺りに関してはさしてバレても問題ではないとも見ている。というよりバレたり察される事になる方がむしろ新一達が小五郎達もそうだが、隆景に関わろうとするような考えはそうそう浮かばなくなるだろうと見ていた。

何せ大殿に小五郎の母親の大本の目的というか願いとしては前々から言っていたよう、小五郎達が事件と関わるような事にしないようにというものだ。今となってはもう蘭の事は諦めてはいるが、それでも小五郎は事件と関わるような事は望んでいない事は前のこともあって新一達はよくよく理解していることだろう・・・その上で新一達からすれば更に問題となるのは隆景の存在だ。

察されたなら察されたででもそうだが、そうでない場合でも隆景という存在は新一達にとっては養子という形でいきなり毛利家に現れたイレギュラーな存在であり、一つ屋根の下で暮らした時間など全くないし性格や好物なども知らないほぼ他人と言っても仕方ない存在だ。そしてそんな他人同然であり小五郎という事件関連で怒らせたくない人物がバックにいて、なおかつ見た目としては荒事など得意そうに見えない優しげでいて儚そうな風貌までオマケに付いてくる・・・そんな人物と交流するだけならまだしも、事件に巻き込んでもいいというような気持ちには色々な意味から到底なれないだろう。

そういった意味から隆景という存在は小五郎も含めて新一達が気軽にもそうだが、ちゃんと考えた上で会いに来るにしても枷になる人物であってどうしようかという悩ましさを植え付けるには最適な人物であった・・・まぁ実際の隆景はとある理由から事件というか人死にはおろか大量の死体を目の当たりにしても平気なメンタルをしているし、それを大殿も同じ理由から知っている。だから隆景としてはもし新一達と関わって事件に巻き込まれてしまえば、内心ではケロリとしているが表向きは傷心をしているといったように振る舞うようにする予定でいることは余談である。









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