危機感の喪失に対する対処(後日譚)

・・・それでそういった目論見通りに二人というか蘭は小五郎の元に気楽に来るような事はほとんどなくなっていった。この辺りは先のように部屋が使えなくなってそれで文句を言おうとした気まずさに加えて、養子の兄弟とは言え他人が家にいるという違和感が強かったことにある。

その上で小五郎は勿論だが、養子となった人物も大殿から蘭に新一達とどういったことから関係が遠くなったのかを聞いているため、いたずらに小五郎達と仲直りだとかで距離を詰めようとさせない上で当たり障りないような様子で蘭達と会う時は接していた為、その蘭達は悪い人物ではないが接しにくいというような微妙な気持ちになったこともあって小五郎の元に来るような事はそうなくなっていったのである。






『・・・ってな感じで、向こうはあんまりこっちには連絡も来訪もしてこなくなりましたね』
「うん、上手く行っているようだね。ただそう上手く行っている要素として考えられる中に一つ入れていいものとして、昔から知っている関係性の人物が血縁関係に加わらなかったから微妙な気持ちになったんだろうね」
『昔から知っている?』
「小五郎は英理さんに有希子さんと昔から知り合いで、蘭ちゃんに新一君もその縁があって昔からの幼馴染みとなっていたんだろう。だからというか私は彼らの中では友人という関係までならまだしも、家族という関係になるのには時間をかけた相手であることが望ましいという気持ちがあるんじゃないかと感じるんだよ。言い方は悪いかもしれないが遠縁とは言えぽっと出の見知りもしない存在に家族だと名乗られた所で、蘭ちゃん達はすんなりとは認められないんじゃないかと思うんだよ」
『あ~・・・そう言われてみると確かにそうかもって思いますね・・・あいつらの性格的に考えると友達までならともかく、家族になるとかってんならそういった時間を使った関係がないと受け入れられないだろうし、あいつらは否定するだろうけれど子どもに関しちゃ自分達の間で出来た子じゃないと受け入れられないんだろうなとは思いますよ・・・養子が悪いと言う訳じゃないけれど、やっぱり子どもは自分達の間で作りたいし血の繋がりがあってこそ家族だと悪気がないままに・・・』
・・・それで少し時間が経って、広島の大殿の家の屋敷にて。
小五郎からの報告の電話を受けた大殿はそれらをよしとする上でもう一つ要因があると言葉にしていくと、小五郎も何とも言いがたそうに納得の声を漏らした。蘭達が薄情と言うつもりはないが、むしろ感情的に物事を考えやすいからこそ時間をかけない関係の薄い存在を家族にというのは、他者についてはともかく自分達がその立場に立ったなら感情として受け入れがたいだろうと。
「その辺りに関しては君達が距離を詰めようとしなければそうそう蘭ちゃん達もどうしようという気持ちにしかならないだろうし、君達は今それぞれで忙しいだろう。そう考えれば彼女達は君達に気軽には声をかけられないだろうし、もし事件に巻き込むような事をしてきたならその事を盾にして関わるのを躊躇わせるようにすればいい。そもそも君も前の蘭ちゃんの事で事件に巻き込まれるようなことは無くなったと聞いているが、隆景に関しては巻き込まれたとしたならこれからも事件に関わることは問題ないと勝手に思われるのは良くないだろうからね。だからもしそうなったなら君が厳しく注意すればどう少なく見ても以降の交流を躊躇うだろうことは間違いないだろう」
『その時は遠慮なくそうしますよ。こんな面倒な環境だって承知して来てくれたこと自体に感謝してますし、隆景は養子だからとか関係無く俺の息子になってくれたんです・・・だからそうなったら蘭にどう言われようが隆景を守ります』
「そう言ってくれると私も安心するよ」
だからこそと今後の詰めの対応が重要と大殿が言うが、小五郎が養子となった隆景という人物への強い気持ちを滲ませる返しに微笑を浮かべながら返した。これなら大丈夫だろうと。









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