いつかを変えることの代償 終幕(後編)

「・・・優作さん。明智にここまで言われるなんて思ってなかったし聞かせたくもなかったが、この際です。俺の本音を話します」
「・・・毛利さん・・・」
そこで手をどけ複雑そうながらも話す意志を確かに滲ませる小五郎の表情に、優作は悲し気な表情を浮かべる。
「・・・別に俺が一番新一に被害を被っただとか、そう言った考えは俺にはありません。ただ・・・俺はもう新一と関わりたくないという考えになり、俺にはもう新一を始めとした事はどうも出来ないと考えて米花町を離れたんです・・・情けないと思ってくれて全然構いません。自分がそうしたのは事実ですから・・・」
「毛利さん・・・」
小五郎はそこから簡潔ながらも自分の気持ちを明かしていき、自分を悪く言っても構わないと覚悟していうといっそう悲し気な様子になる。
「毛利さんはこうは言っていますし貴方に対して悪感情を持っていないのは分かるでしょうが、毛利さんに何か不平不満もですが、米花町に戻ってもらいたいとか交流を再び持ちたいというのは私は看過しませんよ」
「っ・・・!」
「明智・・・交流までって、どういうことだ・・・?」
しかしそんな小五郎に横から口を出して徹底的に擁護するといった姿勢を崩さない明智に優作は息を詰まらせるのだが、小五郎は何故そこまでなのかと疑問に口を挟む。
「単純な話、工藤さんと交流するということは工藤君と接点が出来る可能性が高いからです。工藤君の性格上、考えられるのではありませんか?父親が懇意かもしくは親しげにする探偵・・・そんないかにも工藤君の興味を引くような人物がいる、というのは」
「あ~・・・確かにそうだろうな・・・優作さんのすごさをなまじ知ってるだけに、知り合いだっていう俺の事を知ったら会いに来そうだわ・・・俺がすげぇ有能な探偵だとでも思ってな・・・」
明智がどうしてかを返すと、確かにと小五郎は複雑そうに頷かざるを得なかった・・・基本的に優作の知り合いについてを詳しく事細かに小五郎も知っているわけではないが、優作が友人として懇意にしている人物となればスペックの高い人物ばかりであるとくらいは想像はつく。そしてそんな優作が付き合う人物が探偵となれば、新一が知れば自分の尊敬出来る先達ではないかというような見方をして突撃してくるのではないか・・・そう新一の考え方なら有り得ると思ったが為に。
「それにそういった考えを踏まえてお聞きしますが、貴方の奥さまである有希子さんは逆行して戻られているわけではないのですよね?毛利さんの話では同じ高校出身だということですが、全くそういった素振りが無かったとのことらしいとお聞きしましたが」
「・・・それは間違いないでしょう。有希子と出会って結婚して新一が生まれ、今まで共に生活してきましたが彼女からそういった類いの兆候は見受けられませんでした。彼女のことですから持ち前の演技力で秘密にしているという可能性もあるかと思いましたが、どちらかと言えば性格上私が戻ってきてるかどうかを確かめる為にあえて意味深な事を口にしていたりしていたでしょうがそれもなく・・・」
「あ~・・・有希子ちゃんの性格なら確かにそうなるか・・・」
その上で有希子についてを聞く明智に逆行してないだろうという可能性についての根拠を優作が語れば、小五郎も確かにと頷く。






・・・優作の嫁である有希子とは同年代で同じ高校の卒業生である小五郎だが、英理同様に前世の関係を無くしたいと考えていた事も相まって有希子とも知り合うことがないようにと動いていた。

ただ元々の性格として有希子は人懐っこい事もあるが、自分の気持ちに素直に従い知り合いの行動には敏感に反応して動くタイプ・・・そんな有希子が逆行していて小五郎の以前とは明らかに違う行動を知ればどうなるかと言えば、まず黙ってそれを見過ごすなどということなど有り得るはずがない。むしろ自ら行動を起こし、どういうことかと原因を探りにいくタイプだ。

そういった気質を考えれば、高校の頃に小五郎に対して全くアクションを取らなかったのは有希子が逆行していたならとおかしいと言えるだろう。有希子の性格に前世での関係からして、小五郎と英理に接触してくるのは間違いなかっただろうために。つまりは有希子は逆行していない可能性の方が相当に高い、と言うわけだ。









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