危機感の喪失に対する対処(後日譚)

それでそうして小五郎は二人が日本にいることが少ない事からそう心を揺らされることはなかったのだが、たまに会うことがあった時は何も隠していることなどないという顔を見る度に心がざわつくのを小五郎は感じていったものだった。そして共にかつて感じていた親愛の情は顔を合わせていく度に冷めていくのもだ・・・こんな相反するような気持ちが有り得るのかと小五郎自身感じたものだったが、そこに共通している物が優作達を嫌いになっているからこそということで納得することにした。

ただそれでも一年でも数日会えばいい程度にしか優作達とは会わなかったのだが、新一と蘭の結婚式を行うとなって親族として出席やら準備も兼ねて日本に帰ってきたことでこの五年少しで最も長く接したのだが・・・新一や蘭も含む形でその結婚式関連でまた更に気持ちが冷え込むことが起こったのである。それは・・・






「・・・しかしまぁ優作さん達に新一もそうだが、蘭も蘭でおふくろが言ったことを全く忘れちまったように招待状を平気で送ったのはどうかと思っちまったぞ・・・あんだけ大殿さんに散々に言われたのに、全くそんなことを忘れちまったようによ・・・」
そういったように一人言を漏らす中で、ふと小五郎は主に蘭が招待状を平然と母親に送った無配慮さを呆れたように口にする。






・・・一応というか小五郎が優作達にもう絶対に信用を置くことが出来ないということは蘭に話していないのもそうだが、同様に新一達も蘭に『江戸川コナン』関連の一切についてを明かしていない。これはどちらの視点から見ても蘭に秘密を守れるような性格をしていないという共通認識があったからだ。特に小五郎側の立場として言わせてもらえば自分が抱えている秘密もそうだが、優作達に対しての気持ちを明かせばそんな気持ちを隠しつつ距離を取るくらいなら、いっそ全てを話した上で仲直りをしよう・・・と切り出すだろう。蘭からすれば純粋な善意からと思うだろうが、もう優作達を信じられないという小五郎の気持ちは間違っているということ以上に、新一達との関係を考えて板挟みになってギクシャクするのは嫌だという気持ちから・・・というのが実際の考えだと本人は自覚は全くない形でだ。

そして新一達からしてもそういったことをするだろうという考えがあったから蘭には何も言わない上で動いていくと共に、蘭もそうだが新一も同じように相手と別れるという選択肢が一切なかったからそのまま付き合い続けて結婚するまでに至ったのだが・・・それで結婚式を挙げるとなった時には小五郎は流石に親である自分は我慢して出席するしかないなと母親のことから考えていたのだが、そうして結婚式が近付いてきた時に蘭が「どうしておばあちゃん達は結婚式の出席を拒否したのよ?」と聞いてきた時に小五郎は素ではっ?と言うしかなかった。

・・・一応小五郎もそうだし大殿も蘭が著しく機嫌を害さないようにと新一の事をそこまで言わないように配慮して『江戸川コナン』の時には話をしたが、それでも話の中身もあって事件に蘭が関わること自体におふくろが難色を示していると言ったことは確かだったし、それで先に言ったような形で何回も言い合いになるばかりか小五郎を本気で怒らせてそれで謝りにきたのに、そこから以降も新一と付き合うこと及び事件と関わることを止めなかったのだから、もう蘭はおふくろの事は気にしないと考えるようにしたと思っていたのだ。

だがそうして時間が経って結婚式という段になって来ないのがおかしいというような蘭の様子を見せられたことにより、小五郎は困惑すると共に理解したのだ・・・蘭からすれば自分が探偵を辞めたことでおふくろ達はもうそれでオールオッケーになったのだというように解釈すると共に、新一と共にいて事件に関わることも別に問題のないものとなったと考えて生きてきたのだと。









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