危機感の喪失に対する対処(後日譚)

「・・・しかしまぁ今更だが、新一もそうだが優作さん達もよく結婚式を開くのもだが俺やおふくろ達を呼ぶだったり平気で顔を合わせたりとか出来たもんだな・・・おふくろ達は行くわけないだろっつって出席を拒否したが、本当に今となって考えりゃ有希子ちゃんもだが優作さんも大した役者だよ・・・」
そうして小五郎は次に一人言を口にするが、感心するといったように言葉面は言いながらもその声は優作達に対して底冷えするような冷たさが込められていた。最早全く二人に対して気持ちはないというよう。






・・・小五郎には蘭に対する気持ちが無くなった。なら新一や優作達に対する気持ちがどうなったのかと言えば、『江戸川コナン』の一件もそうだが新一が戻ってきて以降の態度で信用が出来ないという気持ちがより強くなっていった。それは新一が元に戻って度々会ってきた時もそうだが、優作達も久し振りに小五郎と顔を合わせた時も『江戸川コナン』の事など微塵も話題に出さずにまずいことなど一切ないとばかりの顔を見せられたことにあった。

これは小五郎が事実を知らないと思ってるからこそ自分達は何も隠し事もやましいこともないというよう振る舞うように心掛けていたのだが、実は『江戸川コナン』の事を知っているからこそそんな何もないといった態度に不審を大いに抱くのは当然であった。『江戸川コナン』の事は何らかの事情から秘密にしなければならないからこそそんな態度なのは察することは出来たが、察したから納得出来るかと言えば話は別だった。

むしろ『江戸川コナン』の秘密を自分に話さず抱え続けるならばこそ、小五郎の中で優作達を信用出来ないという気持ちが強くなると共にその気持ちを明かさず隠していった。それは小五郎としては大殿からの話もあって『江戸川コナン』の真実を知るだけでも相当なリスクがある可能性も考えたからだが、時間が経っても何も言えないというなら相応の態度をこちらも取ろうという一種の優作達の試金石の機会を設ける為でもあった。

小五郎自身、いかにこれが甘い判断なのか理解している・・・しかし小五郎としてはまだ優作達を信じたいという気持ちが少しは残っていたため、それすらも出来なかったらもう自分達は信用されてもないし利用されただけなのだと諦めるための理由としようと考えたのだ。

だがそんな風に一抹の期待を持ちはしたもののただでさえ会うことのない優作達から事実を話したいといったことを持ち掛けられた時などなく、ならばと自分から有希子と会った時に世間話のようにコナンは今どうしてるのかと軽い様子で聞いてみると、明らかに一瞬で焦ったように誤魔化しの笑顔を見せながらここ最近会えてないのといったように返してきたことに、小五郎はそうかと軽く返した上で察すると共に内心で見切りをつけたのである・・・優作達は自分達に何も言うつもりもないということであり、そしてそんな優作達を自分は信じることもそうだが本音を言わずに済ませた上で蘭が新一と結婚することになっても、二人の性格上日本に腰を落ち着ける形で帰ってくることはないだろうが自分は余程でなければ優作達との顔合わせを避けようと。

・・・正直、小五郎としては有希子がボロを出すと共に事実を明らかにしてほしいという渇望があったのも確かだった。『江戸川コナン』が来るまでは有希子と昔からの縁だったのもあって、仲が良かったんだし困ったことがあるのなら言って欲しかったと。だが有希子はボロが出るように反応しても誤魔化すことに徹底した・・・だからこそもう諦めて見放すことにしたのである。何も言わずに済ませるならこちらも何も言わず、距離を取っていこうと。









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