危機感の喪失に対する対処(後日譚)

・・・小五郎としては蘭の事は何だかんだありつつも最愛の娘というように思ってきたし、母親や大殿との事から蘭の安全の為にと探偵を辞めるという苦渋の決断をした。そして新一が元に戻ってくるまでの間で事件に関わらずに自分もだが蘭も過ごせていたことに安心感を覚えていた物だった。

しかし新一が戻ってきてからの生活というか事件に関わるようになったことで蘭との距離が一気に広がったということもそうだが、その時に新一を上げた上で自分を散々にこき下ろした時にもう駄目だと感じてしまったのだ・・・もう蘭は新一と離れることは出来ないし、新一と関わる方に天秤は傾いて逆側に動かせて傾かせる事は出来ないのだと。

ただ一応というか蘭からしたらそんな大事というか大袈裟ではないといったような気持ちがあった上で、自分にも本気で悪気があって言ったことではないとは理解はしているが・・・大殿との話を聞いてからでもそんな軽い気持ちや考えでずっと新一や事件に関わってきた上で、そんな軽い気持ちを持ち続けるのを止めろと言ってきた結果が自身の事を貶める物だったのだから、小五郎は蘭に対する希望を打ち砕かれたのだ。蘭の心変わりを望めないどころか、むしろ蘭にそうしてくれと望めば望むほどに今回と同じように自分の事を否定してくるだろうし、そうなったら何とか一度は怒りを我慢したが今度こそは手が出るしもう演技としてすら親として接することも出来なくなる・・・という悪い意味での確信を得られる程に。

だから小五郎はその時に残った精一杯の自制心を以て、もう自分を事件や新一に関わらせないことさえ徹底出来るなら何も言わないし関与もしないと言ったのだ・・・それで蘭当人は新一や事件関連に触れさえしなければ元の小五郎に戻ったから仲直り出来たと思っていたようだが、それは小五郎が蘭の性格を考えれば自分は謝ったし何で私の事を許さないのかといったようにキレてくるだろうと後で考えたからだ。良くも悪くも蘭の考えは個人間で留まるものなら謝れば許すものだという幼い物だが、新一関連で否定されることに関しては頑固で譲らない部分があるという点も踏まえてである。

だからこそ小五郎は最後の一線として新一や事件の事で無理矢理関わらせるだったり発言さえしてこなければ、新一と結婚するまでは自分の元で生活するのはやむなしと見ることにしたのである。このやむなしという部分に関しては蘭が高校にいる間もそうだが、大学に行くとなった時もバイトすることに一人暮らしやもう恋人とその時にはなっていた新一の元に行くことを選ばなかったからだ。

本当は小五郎としてはその時には正直もう蘭にはアパートの家賃や生活費くらいは出すから家を出て欲しいと思っていたが、それでも我慢してきたのは大学を出ればもう嫁入りして工藤の家で暮らすのは確定路線だろうからと思ってであり・・・それで実際にそうなったと決まった時には心底から小五郎は安堵した。蘭の性格上度々顔を見せに来ようとするだろうが、それでも新一が正式に職業としての探偵に就くといった事を始めとして、親の庇護を外れた大人としての行動やらを求められることからそう頻繁には来ることはないだろうから気楽になるだろうと。









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