危機感の喪失に対する対処(後日譚)

そんな新一の様子を見ながら阿笠は更にこう志保の言葉を代弁する形で続けた・・・『後から私の事を知ったら工藤君は文句を言うだろうけれど、私の本意かどうかは関係なく組織の一員として活動していたことに変わりはないから、その償いをするためにもここを出るという気持ちもあるわ・・・けれどここに残り続けるということに関して言ったように様々にリスクがあるということもそうだけど、工藤君に話をしてからなんてことをしたら確実に止められるだろうということを考えると、それが嫌だという気持ちしか浮かばなかったから何も言わずに行くと言ったの・・・もう工藤君と話したくないから』・・・というように言われたと。

そう聞かされて絶句した新一だが大殿さんとの一件で自分の都合というかやりたいようにやりたいという気持ちを変えられないことや、楽観的でいて大丈夫だというような姿勢を変えることが出来ない工藤君の事を信用出来ない上でもう一緒にいたくないの・・・と心底から嫌がる表情と声で言われたと阿笠から伝えられ、新一は唖然とするしかなかった。自分と志保が抱く気持ちの差をこんな形・・・それも強烈に信頼がなくなっていたということまでもを知ってしまい。

だが更にそこまで聞いた上で実は新一と共に阿笠の家に来ていたFBIの赤井の連絡先を渡されていた為、自分の体がちゃんと元に戻れたと確信出来たならもう自分を連れていってほしいとあらかじめ連絡をされていて、何とか赤井が来るまで説得はしたけれど志保の気持ちは変わらないまま家を出ていってしまった・・・というように阿笠から言われたことに、阿笠はちゃんと止めようとしてくれたことは理解しつつもすぐに新一は赤井へと連絡をした。本当なら志保当人に連絡をしようとしたが、志保は『灰原哀』の携帯は赤井に迎えに来られた時に阿笠に返したから本人への直接の連絡はどうしようもなかったために。

しかしそうして赤井に連絡したはいいものの、もう志保は会う気も話す気もない上で阿笠邸に戻っても色々と面倒なことがあると聞いているだろうが、それなのに志保に友人としていてほしいという気持ちだけでそれらを覆して戻したとして・・・宮野志保としての立ち位置の確立の仕方もそうだが、そこでかかる金だったり衣食住の保証を君が全て出来るのかと聞かれた時に、新一は言い訳を言いたそうに口ごもるしかなかった。

・・・これはそれまでは組織を追うことや阿笠の厚意に行く場所がないといった様々な理由から志保は当たり前というように阿笠邸にいたが、組織が壊滅して新一や志保が元の体に戻った事に加えてその元の体での生活をサポートするには、どうしても問題となるのはやはり金の事であった・・・まだ『灰原哀』の時は金に関しては新一が組織を追うこともだが元の体に戻るための薬を作れる唯一の存在だから、是が非でもいてもらわないと困ることもあるが自分が金を出していないこともあって新一はその事を考えたこともなかった。

だがもう組織や体の事に関しては終わりを告げたこともそうだが、そうしてそこからかかる金を無償で志保の為ならと出せるような財力など新一自身は一切持っていなかった。あくまで新一は優作達から金をもらって生活しているだけであることもそうだし、新一は自身で探偵としてもだが一般的なバイトをして金を稼いだことに定期的に得られる収入もないのだ。

そんな新一が阿笠や優作達の助けなしに志保の為に金を捻出したり、衣食住だったりと全て保証出来るかと言われて答えを返せないのは当然であった。そしてそんな新一の反応に赤井が志保の事は悪いようにはしないことは約束すると告げた上で、本人の気持ちから彼女は離れたこともそうだがただ今までのように近くにいればいいからという程度でまた何とかというように連絡をするのはやめてほしいと言い、赤井は電話を切って新一を呆然とさせた。組織との戦いの際には相当に協力しあったのに、そんなことなど関係無いとばかりにあっさりと新一を切り捨てるように話を終わらせたことに。









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