いつかを変えることの代償 終幕(後編)

・・・優作夫妻が安穏としている、という明智の言葉は確かな事実であった。基本的なスペックとして新一より上の能力を持つ優作は、事件を解決する体勢に入れば新一よりも断然に早く謎を解くことが出来る。ただそれでも新一も並の人間とは比べるまでもなく頭の回転がいいということは優作も理解しており、妻の有希子も新一なら何かあっても大丈夫だという気持ちを抱いていた。新一ならどんな困難でも乗り越えられるだろうと。

だがそうして安穏とした信頼を向けて放置していた新一と蘭の関係は結婚して一時の幸せは手には入れたものの、結果として離婚することとなった。この事に関して優作達としても不本意と言うか意外な結果でこそあったが、それでも二人を元の鞘に収めるようにと積極的に自分達が動いて間に入るようなことはしなかった。何故なら新一達は好きあっているのだから大丈夫だろうという気持ちがあったからに他ならなかったからだ。自分達が動くようなことはしないでいいと。

だがそうして二人なら大丈夫と見て動いた結果としてどうなったかと言えば、少なくとも小五郎が逆行した時・・・つまり離婚して何年も経つのに、復縁という可能性すらないといった状態だった。それなのに行動を起こさなかったのは親として、孫までいる祖父の立場の人間としてはあまりにも安穏としすぎだと言えた。同時に、何もしなさすぎだとも。






「お、おい明智・・・そこまでにしておけよ・・・優作さんも忙しかったりしたんだし・・・」
「毛利さんのお気持ちとしては知り合いが色々と言われるのは複雑というのは分かりますが、それでも私としては言いたいことは沢山あるんですよ。その例として一つ挙げると、江戸川コナンから工藤新一に戻った後の毛利さんの生活についてです」
「明智、それは・・・!」
「・・・一体、何があったのですか?そこまで聞いて今更聞かないなど出来ません・・・」
「・・・っ!」
ただ小五郎はここで仲裁するよう言葉を挟むが明智が止まる気はないと以前の事を口にしたことに慌てて制止しようとするが、優作が聞かねばならないと苦々しげな表情を浮かべながらも聞いてきた事に盛大に表情をひきつらせる。明智には事情説明の為に話をしたが新一や蘭、それに優作達には意地や見栄で自分は大丈夫と見せてきたかつての自分の苦境を話さなければ話が進まないという事態になっていると理解したために・・・


















「・・・と言うわけです」
「・・・そんな、事が・・・」
・・・結局小五郎は話をするのを止めさせることが出来ず、かつての自分の事についてを明智から話されることとなった。
その中身に優作は絶句といった様子を見せるが、明智はその姿に眼光を鋭くして優作を見据える・・・ちなみに小五郎は片手で顔を覆い、うつむいた体勢になっていた。あまり聞かれたくなかった事実を言われてしまったことに、顔を合わせられないといった様子で。
「毛利さんに工藤君夫妻の事に関して全く責任がないとは言いませんし、毛利さん自身も自分の責任を感じているといったように話していました。ただ・・・工藤君の行動による影響を誰よりも受けた毛利さんの後の状況を考えれば、毛利さんを責めるようなことを言うのは筋違いだと私は思いますけれどね」
「それは・・・何故私にその事を・・・」
「息子さんが事件を解決するために自分を利用した事についてのツケをどうにかしろと、そう毛利さんの立場から言えると思いますか?工藤君は自分のしたことが間違っていないと自信を持っていて、世界規模で暗躍する巨大な組織を潰すという功績を残し、組織を共に潰した人物達は工藤君の事を揃って賛辞している・・・そんな中で自分だけがお前の行動で割を食っているからどうにかしろなんて、本人にもですが親である貴方にも一層言えるはずがないでしょう。多少は時間が経っているとはいえ、そんなことを言えば工藤君の功績に泥を塗り水を差すような事になりますし・・・何より言えばよかったという貴方の言葉は所詮は上から目線で、毛利さんの立場に立っていないんですよ。毛利さんの考えであったり意地にプライド・・・そう言ったものを一切考えていない、貴方の息子さんと同じ傲慢な発言です」
「っ!?」
そこから明智が徹底した小五郎の擁護の言葉を紡いでいき、反対に貴方は新一共々傲慢とまで言われた優作は驚愕に目を見開いた。そんなことを言われるとは微塵も感じていなかったといった様子で。









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