危機感の喪失に対する対処(裏)

・・・そういったように工藤家の面々が苦渋の想いを抱く中、大殿は部屋を後にしてからホテルの別の階に行ってとある部屋に入った。






「・・・大殿さん・・・」
「終わったよ、小五郎。それで、どうだったかな?話を聞いてみて」
「・・・率直に言わせてもらうなら、もう優作さんに博士達は信じられる筈がないと思いました・・・コナンを連れ出す姿を見たこともそうですが、博士が俺に平気で嘘をついたことを考えると・・・」
「そうか・・・」
・・・そうして中にいたのは重い表情を浮かべた小五郎だったのだが、大殿が向けた問い掛けの声に左耳に付けたイヤホンを押さえるように更に辛いというように漏らしていく姿に、その気持ちを静かに目を閉じるように受け止める。
「・・・大殿さんのせいじゃありません。確かにそれは話を持ち掛けられた時は驚きましたしそんなことがあるのかって思いはしましたが、知って良かったと思ったんです・・・この事について知らないままでいたなら、コナンをずっとあそこに置いたままでいたって事ですからね・・・」
「そうか・・・そう言ってくれるなら私も少し気が楽になったよ」
しかしすぐに小五郎が力なくも笑顔を浮かべながら大丈夫だといったように返してきたことに、大殿もまた笑顔を浮かべて返す。






・・・大殿が小五郎に何をしたのかと言えば、実の所として小五郎は初めからというか新一と顔を合わせる数日前から密かに平日の蘭や新一がいない時間に訪れていた大殿により話をされていたのだ。『江戸川コナン』関連・・・特に戸籍の事に関してを。

ただ最初は大殿の言葉でも小五郎は疑うような様子であったが、実際に戸籍が無いことを調べあげる所を見せて証拠を示したことで小五郎もいやが上にでも信じざるを得なくなったのである。『江戸川コナン』にその両親は本来存在していない人物であり、以前に会った文代も含めて有り得ない存在なのだと。

そうして江戸川家の事に関して疑念を抱かざるを得ない状態になった小五郎は、その情報をもたらした大殿に従うことにしたのである。探偵を辞めることに関しては最初こそは自分が今までやってきたことに関して拒否感があったが、『江戸川コナン』をこのまま毛利家に居させ続ける事もそうだが下手にその正体を暴くようなことをしたなら、開き直られて何か良からぬ事を起こされる可能性は決して否定出来ないから何も知らない体を取った上で、探偵を辞めることにする流れを作ってその中で自然に追い出せるようにした方がいい・・・そういったように言われた小五郎は、江戸川家に対しての不信が既に心に大きく根付いていたのもあって、葛藤はあったものの頷くことにした。流石にそんな危険度が不透明な存在をいつまでも置いておきたくはないということでだ。

だから大殿の言葉に頷いた小五郎は新一や蘭に悟られないように平日の昼間の学校がある時間に話を進めていき、これでいいという段階になったのを確認した翌日にさも当日に大殿が来たといったように話を進めていったのだ・・・大殿と小五郎が計算して話の流れを作ったのだと悟らせないようにし、さもそれが自然な流れからそうなったと思わせるために。

ただそこまでして自然な流れを意識させないようにするとなった理由は何なのかと言えば、コナンもそうだがその両親が一千万という大金を渡してきてまで毛利家に是が非でも居させたいという姿勢が見えるため、江戸川家に不穏な気配を感じたから逃げるためというような考えを察された場合、逃げられない為の搦め手なりなんなりを仕掛けてくる可能性を考慮してである。これは大殿が言ったことなのだが、一千万という大金を用意してまでという部分を強調された小五郎は確かにというように頷くしかなかったからそうすると決めたのだ・・・そこまでしてでも『江戸川コナン』を置いておきたいのだから、下手に自分達はお前らの不自然な点を知ったから追い出すとするのは却って危険なことになる可能性も決して有り得ない事ではないと見て。









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