いつかを変えることの代償 終幕(後編)

「どちらに貴方が反応したかは分かりませんが、少なくとも貴殿方・・・奥様も含め、以前の工藤君夫妻の離婚の件に関しては貴殿方は親としての責務を果たしていないと言えると私は思っています。貴方に小説家としての仕事があったということもそうですが、何か貴殿方からして自分達には責任はなく工藤君達の責任でしかないといったような言い分があろうがです」
「・・・それは・・・」
そこでまずはと新一達の離婚についてを切り出す明智に、優作はどう言葉を返していいものか分からないといったように視線をさ迷わせる。






・・・優作は妻である有希子と海外を拠点にして各国を回りつつ、世界でも有名な小説家として活動してきた。工藤優作の作品なら間違いない、そう言わしめる程の高い評価を手にするくらいにだ。

そんな工藤夫妻だが新一がある程度成長するまでは新一の世話もあって日本の家で生活していたが、新一が成長したと見た二人は一緒に付いてくるかを確認して自分で暮らすと返された事から二人で海外で過ごし、小説を合間にこそ書いては来たが夫婦二人悠々自適な暮らしを送っていた。

ただ流石に新一が小さくされた時は心配だということと警告を兼ねて夫婦で一時帰国はしたが、新一が引くことはしないと強く言い切ったことから一応は身を引いた上で時折要請があったり様子見に戻ったりして手助けをしてきた。

そして新一達が組織を潰して元の体に戻り、蘭と結婚となった時にも二人はその場に立ち会った・・・のだが、その後二人はまた以前のように旅をしたりなどする悠々自適な生活を送っていった。新一達が離婚するといった事態になる時も、姿を見せぬ形でだ。






「話に聞く工藤君の性格であれば貴殿方に自分の恥を明かすような事を自ら言い出すのははばかられるというような気持ちがあったことでしょう。貴殿方が時折喧嘩をしつつも仲睦まじい姿を見せていただろうことから尚更にです。ですからこそ毛利さんに話をしに行ったのでしょうね・・・毛利さんの人柄に近くにいることから話しやすいというのもあったのでしょうが、遠く異国の地にいる貴殿方を頼れるはずもないと思い」
「・・・新一の考え方なら、確かにそうだったでしょうね・・・」
「そして結果として二人は離婚する事を選ぶことになりましたが・・・毛利さんから貴殿方について聞いてはいませんでしたから聞きますが、その離婚の際には貴殿方は相談なりなんなりをされましたか?工藤君か蘭さん、どちらかからでもです」
「・・・いえ、されませんでした。私達が話を聞いた時にはもう二人が離婚をした後でしたので・・・」
「やはりそうでしたか・・・」
明智はそこから新一の性格を踏まえた上でまだ知り得ぬ部分についてを質問し、暗い表情のままの優作の返答に予想通りだと呆れたように眼鏡に指を当てる。
「・・・だから貴殿方が親としての責務を果たしていないと言ったのです。例え成人していようと自身にとっての子どもは子どもでしかなく、その孫は貴殿方にとっても愛すべき肉親であった筈です。しかし貴方の話を聞く限りでは積極的に事態の解決には努めなかったのでしょう・・・貴殿方が口を挟めば工藤君は意地になるであろうこともそうですが、何だかんだ言いはしても好きあってはいるのだからいずれ元の鞘に戻る・・・そういったどこか安穏とした気持ちがあって、あえて修羅場に身を置くことを回避する形でです」
「っ!・・・確かに、二人なら大丈夫だろう・・・そう思っていました・・・困難を乗り越えてきた二人ならこれくらい乗り越えられるだろうと・・・」
だからこそ甘かったと痛烈な言葉と予測も交えて話していく明智に、優作は否定を返せなかった。楽観視していた部分は大いにあったということを認めざるを得ないと。









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