危機感の喪失に対する対処(裏)

「・・・優作さん、有希子さん。もう工藤君を連れてここを出て。まだ気持ちとして工藤君は飲み込みきれてないだろうけれど、もうここで話をし続けても何にもならないし、また諦め悪くどうにかならないかってなる方に気持ちは傾くと思うから」
「・・・分かったよ。そもそもここには新一を連れていくために戻ってきたのだからね」
「・・・でもまさか、小五郎ちゃんのお母さんがそこまで思ってたなんて・・・」
「博士が言ったけど、私達は事件があることやそこに巻き込まれる事に慣れすぎたからよ。そして貴方達二人は工藤君なら大丈夫と思って危険な目に合っても死んでいないし、事件の解決が出来たのなら工藤君や他の誰かの心配なんてすることもなかった・・・私も事件があることに慣れていた自覚は今ならあるけど、二人に関しては今一度その辺りを念入りに自覚して今後工藤君にも自身達にも言い聞かせていくべきよ・・・身内が危険に遭うこととその結果として無事であることに慣れすぎた上で、そうでない人の気持ちを考えなければならないということを」
「「っ・・・」」
そして最後とばかりに優作と有希子にもう行くようにと言うと二人もまた心残りがあるというようながら頷いた為、灰原は二人にも考えるようにと言い含めると揃って苦い面持ちになるしかなかった。この問題に関して当事者でありながら傍観者というどちらの立場にもいた上で、新一のやることをその影響を考えずに進めてきた二人からすれば痛い言葉だった為に・・・


















・・・そうして優作に有希子の二人は意気消沈といった様子になりながら同じような様子の新一を連れ、阿笠邸を後にしていった。まだ新一の行き先だったりその後については決まっていないが、優作達が帰ってきていること及び新一を迎えに来たことを他の誰かに見られる訳にはいかなかったから、蘭などがまだ迎えに来ていないならと顔見せに来られて優作達と鉢合わせするような事態を避けるためだ。



「・・・さぁ博士、もう工藤君は行ったことだからおじさんへと連絡してちょうだい。ここに誰か来ない内にね」
「う、うむ・・・だがその前に、あそこまで言って良かったのか・・・哀ちゃん・・・?」
「何を言ってるのよ。むしろあそこであぁ言わなかったら工藤君は諦めることなんて無かったでしょうし、あの二人もそんな工藤君の気持ちをどうにかしてあげたいと思っておばあさんの意に沿わないというか、後でどうにか説得すればいいみたいなことを有希子さんの方は提案しかねなかったわ。そしてそれで仮に工藤君が元に戻ったとしても待ち受けていた結末は私が言ったよう、毛利さんとおばあさんから絶縁となっていた可能性が高かったでしょうし、私達がその時にどんな責任を取るのって話になるけれど・・・博士はどんな風に責任を取れるのかしら?」
「うっ・・・そ、そんなことを言われるとどうしようもないと言うしかないのう・・・」
・・・それで三人を見送った後に二人になった場で灰原の声に阿笠が大丈夫かと確認する声を向けるが、返された責任についての言葉にすぐに気まずげになるがその様に目を細める。
「・・・というより博士、貴方分かっているの?そもそも工藤君がおじさんの元に転がり込むことにしたきっかけは工藤君から言い出したことじゃなくて、博士がおじさんの所で身を潜めて情報を集めた方がいいって勧めたから工藤君が入り込むことにした・・・つまりおばあさんがそれを知った上で考えることとしては、博士はおじさん達が事件に関わることになった元凶ということになるわよ?」
「っ!?」
・・・そしてそのまま灰原から口にされた冷たい口調からの言葉に、阿笠は瞬時に顔色を青ざめさせた。話の流れとして阿笠に話題が行くことは無かったが、そもそもは新一の意志を優先させる為に小五郎の元に行くように言ったのは阿笠に他ならなかった為に。









.
6/27ページ
スキ