危機感の喪失に対する対処(表)

「・・・その辺りのことがあるからあんまりおふくろもだが親父もこっちに来なくなって、蘭も二人に会いに行きたいなんて言わなくなったんだよ。新一が全部悪いっていう訳じゃねーが、蘭からすりゃ新一が全部悪いみたいな言い方が気に入らないってなって、おふくろ達からしたらそういった新一への意地からの考えも含めてどうにかならないかってなってたんだが・・・結局蘭は折れることが無かったからおふくろ達はともかくとしても蘭はあんまりおふくろ達と顔を合わせるだけならともかく、その話をしたくないってなったから顔を合わせるのを控える代わりに俺に電話をするってことになったんだよ。蘭を怒らせる気はないけどそれでも蘭の事は心配だし、近況を知りたい時は蘭がいない時に連絡をするってな」
「そ、そうなんだ・・・(し、知らなかった・・・蘭とおっちゃんの両親がそんな形で疎遠になってたなんて・・・というか蘭がその事を言わなかったのは、そうしておばあちゃん達と折り合いが良くないのとその理由を言いたくなかったからなんだろうな・・・)」
小五郎がその反応に補足を入れるのだが、新一はただ呆然とする以外になかった。蘭と祖父母達が控え目に言ってもあまり仲は良くないのだということを初めて知って。






・・・ただここでそもそも新一が毛利家の祖父母の顔を見ないことに疑問を差し挟まなかった理由についてだが、これは新一からして父方もだし母方の祖父母との関わりがどちらとも薄かったからであった。と言ってもそれは蘭達のように関係が悪かったからというのではなく、単純にどちらの祖父母も両親とも新一とも関わりを持つような事をしてこなかったからだ。

これは両親に新一達への好意が無かったからではなく、父方母方どちらの家の人間も揃って自由人気質というか・・・良く言うなら信頼しているからこそ、悪く言うならうまく行っているなら勝手にしていればいいというように放置しているだけなのだ。だからこそ世界的に有名な小説家である新一の父親である優作は金に困っていないだろうし、新一は自分達の孫というのもあってしっかりしているからそんなに心配する事はないと考えて、何か気を使われるような事から接されてこなかったのである。

故にこそ新一は両方の祖父母に可愛がられていないわけではないが、かといって頻度が高くない形で交流するようなくらいにしか顔を合わせていないのだが、その事に関しては自身の親共々頻繁に顔を見せに行きたいとも会いに来られたいとも思っていなかった為・・・似た者ばかりで構成された親族だったから、別に問題とならなかったのである。新一としてもどちらとの祖父母とも仲が悪いと思っていないし、会いに行きたいというような理由もないからこそ一年に一週間も会わない事に疑問を持たないくらいだった為に。

だからそんな新一は祖父母達との関わりが薄くてもそれが一般から見ても普通であるというように思っていたのもあるし、毛利家も同じように仲がいいと思っていたのだが・・・それが間違いであると共に、自身がほぼほぼ原因であると言われたのである・・・






「そしてそういった話を聞いて心配でいてもたってもいられなくなった結果として、彼女から私に連絡が来たわけさ。もうこれ以上小五郎や蘭が危険に身を投じるのは心臓に悪いし、本当に死ぬことがあり得るのではないかということから説得してくれないかとね」
「そ、それは・・・っていうかどうしておじさんはおじさんのお母さんに事件の事を話したの・・・流石にあの事件の事を言ったらお母さんも心配するのは分かってたんじゃないの・・・?」
「・・・その電話の時に俺も黙ろうかと思ったが、おふくろに何かあったのかって察されて追求されたんだよ。それで正直に話をしたら、流石に今までにないくらいに心配っつーか色々言われたのをなんとか収めて電話を終わらせたんだが・・・それで何とかならなかったから大殿さんに連絡がいったんだろうな・・・」
「っ・・・」
そうしてだからこそ今ここに連絡を受けて来たのだという大殿の言葉に新一は迂闊じゃないかという響きの声を小五郎に向けるが、自身も苦い気持ちを抱いているという様子の見える返しに表情を歪ませた。自身の迂闊さを理解してるというのもあるだろうが、母がそこまで言ってきたのは本当に心底から不安であり心配から行動したのだというように考えたと分かる様に。









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