危機感の喪失に対する対処(表)

『お願いします大殿さん、もうこれ以上は無理です・・・助けてください・・・このままだといずれ蘭もそうだけれど、小五郎も手遅れになるんじゃないかって心配で・・・』
「・・・分かりました、引き受けましょう。ただ本当にいいんですね?私に解決の手段を全面的に委ねるというのは・・・」
『構いません・・・手遅れになるよりは断然にいいと思いますし、それ以上に問題なのは小五郎達よりもむしろあの子どもだと思ってますから、あの子どもをどうにかしてくれるなら例え小五郎や蘭が不満を口にして恨まれることになっても覚悟の上です・・・』
「・・・そこまで言っていただけるならこちらも手を尽くすことを約束します」
・・・とある部屋の中で顔つきこそは若いものの白髪の壮年の大殿と呼ばれた茶色の着物を着た男性が電話で会話をしていた。電話口から聞こえる悲痛な想いが存分に込められた女性の声に、最終的に柔和だった顔を真剣に引き締めて頷く形で・・・


















・・・そんな二人の電話から時間は二週間という時間が経った。



「ただいま~・・・ってあれ?お客さん?」
「客ってのとはちょっと違うな・・・この人は俺の親戚の大殿さんで、ちょっと話をしに来たんだってよ」
「どうも、大殿です。初めまして」
「初めまして、江戸川コナンです!」
・・・場所は変わり、毛利探偵事務所の中。
居候という身分ながらも当然とばかりに家主である小五郎の仕事場に入ってただいまというコナンだが、小五郎と対面上にソファーに座っていた大殿に疑問の目と声を向けると返ってきた説明と挨拶の声に、すぐに子どもらしく元気に挨拶を返す。
(大殿・・・それなりに長い付き合いがあるのに聞いたことねーなー、おっちゃんや蘭からそんな親戚がいるって・・・)
しかしその内心は『江戸川コナン』としてではなく『工藤新一』として、子どもらしくない疑念に満ちた声を漏らしていた。そんな名字の親戚がいたことなど知らないと。
「(・・・なら聞きゃいいか)あの、大殿さんってどこから来たの?おじさんは久し振りって言ったけど、そんなに遠い所にいるの?」
「はは、まぁね。私は基本的には広島にいるし、親戚とは言っても小五郎の母親の兄弟のいとこというくらいだから普段はそこまで関わりもないんだが・・・その小五郎の母親から連絡が来たから、こうして私は小五郎に会いに来たんだ。電話だけで話をするには色々と込み入ったというか複雑な話であると共に、小五郎達にも大げさではない話だと認識してもらうためにね」
「え・・・(な、なんだ・・・何を話に来たんだ、この人は・・・)?」
それで分からないなら直接聞けばいいと問い掛けの言葉を向ける新一だが、柔和に微笑を浮かべながら応対してくれはするが中見が何か決して安穏と出来ないような返しに内外ともに戸惑いの声を漏らす。
「・・・ま、本当なら大殿さんが帰った後に蘭もいる場で言おうかと思ってたが、どうせお前の事だから聞きたい聞きたいって言うだろ・・・俺のおふくろから何を言われたのってな」
「う、うん・・・そりゃ気になるよ・・・(ていうかやべぇ・・・おばさんの時もそうだったけど、おっちゃんの両親の顔が全く思い出せねぇ・・・!)」
そんな様子に小五郎は仕方無いというような声を向けるが、新一は戸惑いを隠せないままに内心で思い出せないと漏らした。小五郎の両親と出会っているはずなのに、その顔が思い浮かばなかったことに。






・・・コナンこと新一は事情があるから現在は正体を隠して小五郎の元に『江戸川コナン』と名乗る形で居候として毛利家に入り込んでいるが、元々新一として毛利家と関わる機会は多々あった。だがそうして長い時間を毛利家と関わっている筈なのに、新一は小五郎の両親の顔を忘れるくらいに長い時間顔を合わせていない事に今気付いたのだ。それこそ今の小さい体になる前・・・一度目の今の体に成長したかどうかくらいが、ギリギリ会ったかどうかくらいだという記憶があるくらいだと。









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