知りたいものを知れることが幸せに繋がるとは限らない

「ま、出てきた顔を見たらまたやり直すみたいな感じじゃねーとかまた後で連絡を取り合うみたいな約束をして先に出たって訳じゃなさそうだから安心して顔を見せたんだがな」
「え・・・私、どんな顔してるの・・・?」
「つれーって考えてるのが分かる顔でうつむきながら店から出てきたんだよ・・・どんな話をしてたのかは知らねーが、少なくとも明るい話をしてきたんじゃねーってのはすぐに理解が出来るくらいにな」
「そう、だったんだ・・・」
しかしそこで小五郎が表情についてを言ってきた為に蘭は疑問の様子を見せるが、返された言葉に何とも言い難い顔でうつむく。それだけすぐに分かるような顔を隠せずにいたのだと聞かされたことに。
「・・・ま、これでもうやることは終わった。後はもう俺は帰らせてもらうから、気を取り直したいんなら自分でどうにかするんだな」
「・・・もう、行くの?」
「ここでグダグダしてたら新一が出てこねーとも限らねーし、言いたいことは全部言い終わったってのもあるが・・・念のためにここに残ったっつっても、俺らの関係は俺からすりゃもう店を出た時点で終わったもんなんだ。だからこれで本当にサヨナラだ」
しかし小五郎は慰めの言葉などかけることはしないばかりか、これで終わりだと蘭に背中を向ける。
「・・・もう、本当に会ってくれないんだね・・・」
「俺の気持ちを聞いた上で新一と別れるって選択を出来たから、これならうまくいくんじゃねーかって思ってるのかもしれねーが・・・さっきの話もそうだが俺としちゃお前らをもう一回だけ信用するみたいな気持ちにはもうなれねーんだよ。それでもお前らを信じる、みたいな主人公っぽいセリフを吐くのもそんな気持ちを持つのももう俺には無理だ」
「っ・・・」
蘭もやはりというように確認をするが、振り向くことなくただ淡々と無理である事を告げるその様子に辛そうに顔を背ける。
「そういうわけだ。じゃあな」
そして小五郎は肩辺りで手を振りながらその場を後にしていった。未練などないというよう足を止めることなく、振り返ることなく人混みの中へと消えていく形で。
「・・・そう、よね・・・もうここで別れないといけないんだから、私ももう気になるって言っても振り向かずにいかないと・・・」
蘭はそんな小五郎の姿を見失った事で辛いという気持ちを滲ませながらも、小五郎の立ち去った方向とは別方向へと歩いていった。小五郎の帰る方向と蘭の帰る方向は違う方向だった為に。






「・・・おっちゃん・・・蘭・・・」
・・・そして一人残った新一はただ座ったまま両手で顔を覆い、悲嘆に暮れるばかりでずっと時間を費やしていき・・・喫茶店の閉店時間が訪れるまで、そして店員からの閉店だという声掛けが来るまでずっとそのままであって、店から出る時も心ここにあらずといったようになっていたのだが・・・そういった有り様は残り二人の様子も相まって、新一がどれだけ未練を抱いて前世を想って引きずっているかの対比になっていた。もう前世を完全に過去の物として片付け前を向いて迷わず進む小五郎に、苦心しつつも決断を下して前世にこだわらないとした蘭に、未だに前世のようにと求めすぎるからこそ過去を振り切れず後ろ髪を引かれながら足踏みを続ける新一といった形の三者三様の対比に・・・









END









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