知りたいものを知れることが幸せに繋がるとは限らない

「・・・新一がそうなる理由は分かるわ。気持ちに考えは固まってはいてもそれで今の家族とか環境を全部見捨てる事は流石にって気持ちがあるのもそうだし、そんな薄情者に見られたくないっていうような部分からどうにか言い訳をしたいんだってことがあるからっていうのは・・・でも新一がどっちを優先したいかっていうのは間違いなく昔のような環境の方だっていうのはこっちで会ってから別れるまでの二ヶ月近くの時間でよく分かってるし、ここで私が言いたいのはお父さんは帰っちゃったけど間違いなく私と同じで・・・もう今の二択のどっちを選ぶのかって言われたら前のようにしたいなんて思わないってことよ」
「っ!?」
だが更なる衝撃をもたらす宣告に、新一はたまらず目を大きくするしかなかった・・・小五郎は先程の話からまだしもにしても、蘭までもからそんな風な答えを聞くと思わなかったというよう。
「・・・何でって思ってるかもしれないけど、その理由は私もお父さんと同じでこっちの知り合いや家族を昔のようにやりたいからってことで切り捨てるような事なんか出来ないって思ったからだよ・・・私も私でこの世界でこうして新一やお父さんと出会うまで最初こそはどうするかって悩んだりしてきたけど、前世の事なんか知らないから光太郎達は私の事を本当の家族だと思って接してきてくれたし、友達も私を友達だって言ってくれたし仲良くしてくれた。そんな光太郎達の事を私は好きになっていったし、お父さんは私達に対する気持ちもあったから尚更にこっちの人達を好きになっていったんだろうと思うけど・・・これからも、そして今からも新一はもうそんなことは思うことは無いんだろうなって感じたのよ。前世のようにってことを求めすぎててもう家族や友達とかに工藤の頃の両親だったり、服部君を相手にしたみたいな気持ちなんか抱けないんだろうし、それこそ昔のようになれるっていうなら今の家族とか交遊関係を綺麗な言葉でまとめて終わらせようとするんじゃないかってね・・・」
「っ、そ、そう言うお前はどうなんだよ蘭・・・園子とか和葉に会っても、そんなことを言えるのか・・・?」
「それは確かに会えるなら嬉しいけど、今の家族や友達との関係を終わらせてまで昔のようになんて風に強制されたら、今の私は素直に頷けないし考え直してほしいって言うと思う・・・けど新一、気付いてないの?そういったことを言うっていうことは、やっぱり貴方は昔のようにしたいって言ってるようなもので、私にも自分と同じように考えてほしいって言ってるようなものなんだって」
「!」
蘭は自分の考えをまとめるように言う中で新一は何とかというように懐かしい名前を出して反論をしていくが、それに答えつつもその口振りが証拠と言われてやってしまったとばかりに衝撃を受けた。前世に自分と同じようにこだわってほしいといった気持ちが露見したと。






・・・新一からすれば今生を含まない前世という過去は、探偵としてヒーローのように思われると共に満ち足りた物であって心踊る物であった。そしてその過去では本当の友人に仲間と呼べる存在は服部を筆頭に何人も存在していた・・・本当のと付けたのは推理に事件が関係しない友人は新一は認めたくはないだろうが、見知らぬ他人よりは仲がいいし見知っていると言った程度の存在くらいだったからだ。服部達と違って推理や事件関係で対等に語り合うことが出来ないからこそ、無意識にそういったように新一は友人の位置を分けている形で。

だが今生ではそんな友人達もヒーローとしての探偵になれる機会もないままに鬱々とした気持ちを抱えながら生きていき、あまつさえ蘭にはそんな様子を見て変わることが出来ないと判断されて別れを切り出されたが・・・それでも尚、新一は自分が変わりたいだとか変わるべきだというように動くとか考えることは出来なかった。甘美な思い出に交遊関係をもう過去の思い出として新たな生き方を見付けるなど、新一には考えられなかったのだ。

・・・そして今までの話を受けて新一が変わるかと思えばそうではなく、それでも諦めたくないという気持ちを持ち続けるばかりであった。そしてそこに蘭も含めたいという考えが強く、その考えを捨てきれていないのだが・・・もう蘭にはそのつもりは一切ないのだ。









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