「お父さんの気持ちが固くて私達の事なんかもう信用出来ないってなってたのは嫌でも分かったし、言ってることも分かったわ・・・こっちで出来た家族がいるし、その家族を大事にしたいって気持ちがある。そしてお父さんに限って言うならもう・・・前の家族だった私達より、今の家族だっていう二人の方が本当に大事って思ってるって気持ちがあって、それは覆す気なんか一切ないってことが」
「・・・それをどうにかしたいって思わないのか・・・蘭は・・・？」
「・・・もうそんなこと無理だってさっきの話で思っちゃったし、そう出来たとしても光太郎とかこっちの両親とか友達の事を全部捨ててお父さんの娘って立場に無理矢理にでも入り込むなんて出来るわけないじゃん。前世で親子だったんだからまたそうしますとかって言ったって誰がそんなの信用するのって話になるし、そんなことをしたらしたででこっちでの家族とか友達とか何だったのって話になるんだよ・・・前世の家族が大事だっていうのは分かるけど、それで簡単に切り捨てられた自分達は何だったのかってなる形でね」
「っ！！」
蘭が小五郎の立場や言ったことについてを受けた上で自分の考えたことを話していき、抗議したそうな新一に対して現実的に見てもだが心情的に見ても周りの気持ちを考えない事は出来ないとの言葉に新一は動揺に盛大に体を揺らし、その姿に蘭は悲し気に目を伏せた。
「・・・新一に真波って家で生まれてきたことや育ってきたこと、そしてその家族や生まれ育ってきた環境に対して思い入れがない訳じゃないってのは聞いたけど・・・今となっては分かるわ。前世での新一の両親や周りの事件が起きやすい環境に、服部君達みたいな事件が起きることを一緒に楽しんでくれる友達がいる事を新一は本当に楽しんでて・・・こっちでの環境に家族や友人と比べるまでもなく、前世の方が断然にいいって思ってるんだってことが」
「そっ！？そんなこと・・・そんな、ことは・・・・・・」
「・・・否定出来ないとかって話どころじゃないでしょ？だから新一は今そうして否定の言葉を出そうとしても出てこなかったのもあるし、多分っていうか絶対に・・・服部君とか一緒に推理出来るとか話し合える人がいて、それで前世のように事件に向き合えるって言われたら家族や友達とはもう単純に会えなくなるくらいの別れが必要とか言われたら、迷うことなくそうすることを選ぶとしか思えなかったわ。もしそんなことになるんならこっちでの希薄な関係の家族や友人達は自分の犠牲にしないためにも、自分が必要とされるならそっちに行く方がいいだろって言い訳をする形でね」
「おっ、俺がそんなことをするって思ってるのかよ蘭は・・・！？」
「じゃあそうしないのとそうするの・・・その時にどっちを選ぶの、新一は？」
「そ、それは・・・っ・・・」
そうしてそのまま今のままが続くことと前世に近くなるならどちらを選ぶのか・・・蘭が前世を忘れられないだろうとハッキリ投げ掛けつつ向けた問い掛けに、新一は極めて答えにくそうに視線をさ迷わせるが・・・そこで蘭は顔を上げて悲しさを振り払った決意のこもった視線を向けた。
「新一、聞こえがいいような理由付けの言葉を探そうとするのはやめて・・・というかどっちかなんて聞かれた瞬間にそうする方にするって決まっていたんでしょう？」
「そ・・・それは・・・」
「ハッキリしなさい新一！はいかいいえのどっちかを答えろとしか私は言ってないのに、言い訳を考えてる時点でみっともないって分からないの！？」
「っ！！」
そうしてどうかを答えるよう促す言葉も添えて向ける蘭だが、新一が言葉をまだ探そうとモゴモゴしている様子に声は抑えてはいるものの、強い声で一喝の声を向けてその体をビクリと大きく揺らした。明らかにその蘭の様子に圧された形で。









.