知りたいものを知れることが幸せに繋がるとは限らない

「・・・もうその事は一先ずはいいよ。今話さないといけないのはお父さんが話したことについてになるけど・・・新一はどんな風に考えたの?お父さんがあぁ言ったことに関しては・・・」
「そ、それは・・・その・・・」
ただそのことには触れないと言うが小五郎の発言についてを複雑そうに聞かれたことに、新一は喜ぶことなんて一切出来ずに辛そうに言葉を詰まらせるしかなかった。
「・・・分かるよ新一、そうなる気持ちは・・・あんなことをお父さんが言うなんて思ってなかったから、どうしていいかって気持ちは・・・」
「お、俺は・・・し、知らなかったんだ・・・おっちゃんがあんなことを考えてたなんてことは・・・」
蘭がその様子に同調といった声を漏らすと、新一はようやくといったように呆然とした言葉を口にしていく。あんな本音なんか全く予想出来ていなかったと。
「・・・ってことはやっぱり私達ってお父さんの事を下に見てて、お父さんの事を本当の意味で見てなかったんだね・・・お父さんなら大丈夫だろうとか、辛いことなんかお父さんにはないんだろうって勝手に思ってそれであんな風にお父さんは怒ってた・・・ただ言葉の感じだけだともう怒ってはいないんだろうけど、それは私達と関わらない生活をしてるからであって、私達を許してる訳じゃなくてこれ以上お父さんに関わろうとしたら間違いなくお父さんは怒ると思う・・・もうこっちでまで俺を巻き込むなって言ってね・・・」
「そ、そんな・・・」
「というか新一・・・そもそもここでの話を聞いたなら貴方はどうしようとしてたの?お父さんとまた昔みたいに仲良くしたいとか思ってたの?また探偵として一緒に活動しようって言いたいとでも思ってきたの?それとも・・・お父さんがいるなら私とまたやり直せるんじゃないかみたいな気持ちもあったから、ここに来たんじゃないの?」
「っ!」
「・・・何かそんな感じがありそうって薄々思ってたけど、本当にそうだったんだ・・・」
そうして沈痛な面持ちで自身が感じたことを話していく蘭に新一が愕然とするが、話題をここに来た目的についてに変える中でこれかとばかりに問い掛けを向けるとハッキリ息を詰まらせた様子に、蘭はたまらず首を横に振った。当たってほしくない予想が当たったということに。






・・・新一が諦めのいい性分ではないことは新一当人もそうだが、蘭も長い付き合いから重々承知していた。そしてそんな性分があったからこそ新一は当人からしての言い訳はさておき、小五郎を利用してきた上で決別を告げられる出来事となった訳だが・・・蘭も自分が別れを告げたからといってスッパリ蘭の事を綺麗に諦めます、なんて考え方をしないだろうとは見ていた。

ただそれでも別れを告げてからまだ三月も経っていない中で復縁をしたいと切り出してこないことから、キザに格好をつける事にも重きを置いている新一は諦めが悪いと見せるような格好の悪い事はしたくないのもあって一応は引いたと見たのである。未練タラタラの男などになりたくないし、蘭にそう思われるのも見栄から嫌だからと。

だから未練があろうと無かろうと時間が経って京都に戻ることになればその時には物理的に近い位置にもいなくなるだろうし、新一は東京から出るような事はまずないだろうから大学を卒業すれば偶然でも会う機会は無くなる・・・そう蘭は思っていた。

しかし偶然からとはいえ近い位置に来てしまった上で小五郎までもがこの世界にいることを知ったからこそ新一もいても経ってもいられなかったのだと考えたが、少しずつ話していく内に蘭は感じていったのである。全てが全てとは言わずとも新一の中には自分との復縁も含めて目論んでいて、きっかけ次第でそうしたいという部分があったのではないかということを。だが・・・









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