知りたいものを知れることが幸せに繋がるとは限らない

「・・・ねぇ新一・・・どこから私達の事を見ていたの・・・?」
「っ・・・」
そうして二人だけになった所で蘭は小五郎の言葉もあってどこからと聞くと、新一はハッキリと苦い顔を浮かべるがすぐに口を開く。
「・・・俺も、実は大会に行ってたんだよ・・・山岳の出た大会にな・・・」
「えっ・・・何で?言っちゃなんだけど、新一はこっちでの弟と付き合いなんてなかったのもそうだし、ロードレースなんて尚更に興味なんて無かったんじゃないの・・・?」
「・・・単純に気分転換しようって思ったのもそうだし、出版社の人からも少し休んだらどうかって言われたんだよ・・・作品が順調に出来ているのはいいけれど、あまりにも順調すぎてこっちとしてはちょっと間を置いてくれないと他の作家の枠を使わないといけないし、単行本にするにしてもあまり本を出しすぎても今のペース以上に本を出したら、無理矢理働かせてるんじゃないかみたいな声が出始めてるから、その声を抑えるためにも作品のストックはあるからちょっとは休んでくれってな・・・」
「・・・出版社の人達から休んでくれって言われるって、どれだけ作品書いてるのよ・・・」
そうして出てきたのは休みの一貫であったというものだったのだが、その中身を受けて蘭は相当だったのだと感じた・・・新一がどれだけ活動してきたのかは知らないが、本を出したい出版社側がそこまで言うということはそれだけ新一がやりすぎと言えるレベルで作品を書いていたのだと。
「・・・それで作品を出せないならどうしようかって思ったんだが、こっちでの親から山岳がまた部活でインターハイに出るって連絡があったからいい気分転換にネタになるかと思って大会を見に行ったら・・・」
「私とお父さんの事を見つけたんだ・・・」
「あぁ・・・つっても見付からないように隠れながら二人の会話を聞いてたんだが、おっちゃんが昔と違って蘭に距離を取ろうとしてたことにどうしてなのかって思って、直接話を聞きに行っても良くない気がして・・・」
「・・・それで私かお父さん、いえ私を尾行辺りでもしてきたんだね・・・お父さんの居場所は分からないから、私の住む所なら分かるからって事で・・・」
「っ・・・」
だからそれで大会に行った上で二人を見付けたのだと新一は口にするが、蘭がそこから尾行してきたという推測と共に冷めた目を向けるとたまらず視線を反らしてしまった。それが正解だということを認めるように。






・・・一応というか、新一は蘭の現在住んでいるアパートの場所に関してを知らない訳ではない。別れる前は新一のマンションでしか会わないのがほとんどであったが、それでもまた一緒になるとその時は思っていたことから自分のアパートの場所はここだというメモくらいは渡していたのである。何かあれば来ていいし来れるようにと。

ただそんなことにはならずに話をした上で別れることにした蘭だが、アパートの場所に関しては新一に割れているといった状態にあったのだ。そういったことを考えれば住んでいる場所の位置を特定出来ていない小五郎を無闇に探すより、居場所が分かる蘭から尾行した方が早いとなるのは新一からしたなら当然であった。

しかし蘭からすればもう新一は別れた筈の存在である。一応は小五郎が気になってという理由に関してはまだともかくとしても、そんな別れた筈の存在が尾行という形で何も言わずに後を追ってきたのだから女性としての立場からすれば、思わず不愉快になるのは当然と言えた。









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