知りたいものを知れることが幸せに繋がるとは限らない

「・・・仮に俺がその時に助けを求めたとして、だ。そこでお前らが俺に言う事が何かって言えば、やっぱりおっちゃんにお父さんは駄目だなみたいな言葉以外が出てきたかをお前らは想像が出来るか?当時のお前らが俺をどう見てたのかを思い出してだ」
「っ・・・!?」
それでそのまま小五郎が口にした重い問い掛けの言葉に、蘭は顔色を青くして盛大に息を呑むしかなかった・・・先程言われたことから蘭としては軽い様子でそう言っただろうことが想像出来たが、だからこそその言葉が小五郎の逆鱗に触れるどころか逆鱗をひっぺがした上で、その程度で怒るなんて大人げないと笑いながら言うレベルの事だと感じたのと同時に・・・その時にそんなこと言うはずないと否定出来る言葉が出てこなかった為に。
「・・・お前も分かったようだな?その時そんなこと言うはずなんてないどころか、むしろ率先して言ってただろうってことはな。そしてそうなったらの先を考えてみりゃ俺はずっとお前らを許せねぇってなった上で、お前らが俺とまた仲良くなりたいとかってことで動こうとしてただろう・・・ただそんなことが続いてたら俺がお前らに殴りかかるだとかして、もうそうされたお前らはともかく俺がどうしようもない事態になるってのが目に見えてたから何もしねー方がいいって思ったんだよ。どうせ俺ばっか色々な意味で馬鹿を見るだけになるのは想像がついたからな」
「そ、そんな・・・そ、そこまでお父さんは私達を信じられなくなっていたの・・・!?」
「そうだ・・・そして当時の俺は単純にそう思うくらいだったが、こっちで生きていくにつれて酒は付き合い程度で飲むくらいで煙草もギャンブルもやらなくなった分の時間、坂道がアニメ好きになったってのを知って俺もアニメを見るようになったんだが・・・そんなに大人が馬鹿にするようなもんじゃねーって思わなくなった上で、お前らは俺をそんな風には見てないって言葉じゃ否定はするだろうが、お前らが本質的にはこうだろうって思ってるだろうピッタリな言葉を知ることになったんだよ」
「っ・・・!」
小五郎はそんな蘭の様子を踏まえつつ自身の考えから何もしないことを選択したと言いつつ、今生で見たアニメから考えたというその言葉に蘭は元々押され気味だったがその中身に何か良からぬ物を感じたのか、たまらず体を震わせた。






・・・酒も煙草もギャンブルも、そして言葉にはしていないが綺麗な女性に対する感心はもう小五郎の中には存在はしていなかった。これは二度目の子ども時代が長くてそんなものに触れられなかったこともあるが、今の妻と結婚して坂道が生まれたことに探偵とは程遠いサラリーマンという立場になったことから、真面目に生きないといけないと思ってそれらをやらないようにと決めたのである。

しかしそうして生きていく上で東京に一人で暮らしていた小五郎には他に趣味の娯楽がなかったことがあり、暇を潰す時間はテレビを見るか本を読むくらいしか無かったのだが、坂道がアニメ好きになっていったのを聞いて小五郎も坂道に合わせる為の話題作りとしてアニメを見てみようかとなったのだ。アニメについてをすごく嬉しそうに語る坂道に、会話を合わせる為にも時間を潰すのにもいいかと思って。

ただそうして小さなきっかけとしてアニメを見始めた小五郎だが、思いの外にハマることになった。元々決め付けが多いが実際に出会うとハマりやすいタイプだった為、ハマらない作品もあったがハマる作品も多かった為に一人の時間の暇は大抵録りだめしていたアニメを見ることに費やしているのである。

ただそうして様々なアニメを見ていく中で、小五郎は色々と考えることもあったのである。前世での蘭達の事についてを思い出しつつ、こうなのではと考えるような形で。









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