知りたいものを知れることが幸せに繋がるとは限らない

「・・・ただ話を進める前に言わせてもらうが、俺からすりゃ今から言うことに関しちゃもう過去の事だってこともそうだが、その時の自分の事をどう冷静に言葉にすりゃいいのかって語彙を持ち合わせちゃいなかったのを今は十分に自覚している・・・そしてそういったことを踏まえた上で言っときたいのが、ここから先の話に関してはあくまで当時の俺が考えて感じたことを今の俺がまとめあげたもんであって、お前らに理解してもらいたいとかってのもだが・・・お前らの言い分を聞きたいって思って言うことじゃないからそこを了承してもらう」
「い、言い分って・・・」
「要はそれだけのことだと俺は思ってるし、今更あの時はこうだったとか言われたところでもう終わったことで変えようもない事であって・・・お前らがどう思おうが俺からすりゃ関係無いことだ。後でどうこう言うのは目に見えてるから先に言わせてもらうがな」
「っ・・・」
しかしそれで早速話すのではなく前置きといったように言葉を重ねる小五郎に、蘭はまた息を呑むしかなかった。これから何を話されるのかと、その言葉から嫌でも重さを感じさせられる形で。


















・・・そうして小五郎は語っていった。かつての自分を名探偵という操り人形に仕立て上げた新一が役目を終えた後に言いたいことを言うだけ言った後に自分の事を放置し、そしてその後に舞い込んだ仕事を失敗に終わっていったことに関してを蘭も含めて、やっぱり駄目な人間だみたいに言ってきた事から新一に蘭に対する強烈な怒りを抱いたのだということを。



「・・・そ、そんな・・・」
・・・そこまで聞いて蘭は顔を青くして絶句するしかなかった。今となっては蘭当人からすればおぼろ気な記憶程度な物だが、新一も含めて軽く言った言葉にそこまでの怒りを小五郎がその時に見せていた笑顔の裏に抱いていたのだということに。
「・・・まぁ今となって考えてみりゃ俺がマヌケだったって部分があったのは事実だし、仕事が失敗したこと自体は俺の責任だってことは理解しちゃいる。そしてお前らからすりゃ俺を侮辱だとか悪気があって言ったことじゃなく、軽い気持ちで言ったことってのもだ。だがあの時の俺はそんな悪気のない軽い言葉だったからこそ、お前らに対しての怒りを抱いた・・・新一に対しちゃ俺が担ぐには重すぎる名探偵の看板を軽くすることすらなく俺を捨て置いて、お前に関しちゃ新一のせいって部分があることなんか全く考えもせず俺が探偵としても人としても駄目な存在だって言ったこと・・・例え俺が新一の操り人形にされる前はちゃらんぽらんな人間だって見ていたからと言っても探偵として、親としてお前を育ててきた俺を否定したことにだ」
「っ!?」
だが小五郎は構わず俯きながら静かに自身の非を認めつつも二人・・・特に蘭に対しての怒りがあったという言葉を向けると、蘭は衝撃を受けて身を震わせた。小五郎がそこまでの気持ちを自身に向けてきたことに。
「・・・繰り返すが俺が色々とだらしなかったりマヌケだったってことは承知はしているし、それでお前が俺の事をだらしない人間だって見てたのは端から見りゃ間違いじゃなかっただろうとは思う・・・けどあの時の俺は失敗続きの仕事とそこで向けられる失望の声や目に、なんでこんな風な事になんなきゃならねーのかってずっと思っていた。だがそれでも言っちゃなんねーことが多かったってのもそうだったし、新一が元に戻ったんだから大人として我慢しなきゃなんねーんだって俺は自分を鼓舞してきた・・・そんな時にお前らから言われた言葉で俺が今まで我慢してきたのは何なんだって思っちまった上で、お前ら二人の態度に怒りが浮かんだ後にもうお前らと関わる気にならねぇって考えになったんだよ。俺がこうなった原因の新一は自分のせいでもあるなんてちっとも思っちゃいねーし、お前はお前で新一のやったことだからなんて思わないばかりか俺の気持ちや立場なんか見もしないでそんなことを言えちまうって考えると、下手に俺が思ってる事を言ってもお前らにそれは伝わらないどころか余計に事態がこんがらがるだけじゃねーかってな」
「じ、事態がこんがらがるって・・・」
「お前らが納得出来ないから言い合いになるってのもそうだが、安室や赤井達まで出張ってくるんじゃねーかって思ったんだよ」
そうしてそのまま自身の考えたことについてを続けて小五郎が話していく中で蘭が恐る恐るひっかかった部分についてを口にすると、安室に赤井達の存在についてだと返す。









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