知りたいものを知れることが幸せに繋がるとは限らない

「・・・さぁどうする?今日じゃなく後日に回してほしいなんてのは許さねぇからここでどうするかを言え」
「そ、そんな・・・」
「言っとくがマジで裏とか空気を読んで話を聞かないといけないみたいな事を思わせたいとか、せっつかせたいって思ってこんなことを言ってんじゃねーぞ。話してほしいって言われたから話すとは言いはしたが俺としちゃ言いたくねー事には変わりはねーし、さっき言ったように俺はこれ以降にお前と会ったり連絡するリスクとかを考えてもうここで聞いて後悔するか、聞かずに後悔するかの二択で済ませて欲しいんだよ」
「っ!・・・どっちかを選べば後悔しない、なんてお父さんは言わないんだ・・・」
「お前の性格を考えりゃ聞かないままなんてモヤモヤするから嫌だって言うだろうってのが簡単に予想出来たから言ってんだよ。けど中身に関しちゃ言ったようにお前らにとっちゃまず聞きたくなかったって話なのは確実だから絶対にどっちを選んでも後悔するっつってんだ・・・ま、言ってみりゃ進むも地獄で引くも地獄って状況だな」
「っ・・・!」
それでまた目を閉じて後に回すことを許さない事もだが、どちらかの後悔を選ぶのは確かと告げた上で皮肉げな笑みを口元に浮かばせる小五郎に蘭は苦心の表情を浮かばせるしかなかった。聞きたいが聞きたくないという相反する気持ちを掻き立てる言葉に悩むしかないとばかりに。
「・・・ま、流石に考える時間が一切なしってのはキツいだろうから少し位は考える時間はやるよ。つってもここで何時間もなんてのは店にも迷惑がかかるから、今から十分ってとこだ」
「じゅっ、十分って・・・」
「どっちを選ぶにしてもここで終わりにするっつっただろ。だから今から十分計る間何も言わねーからどうするか考えろ・・・はい、スタート」
「そんなっ・・・!」
ただ一応考える時間はやるとは告げつつ目を開け左手につけた腕時計を見る小五郎に十分という時間に蘭は唖然とするが、構わず考えろと始まりを告げる様子に辛くなりながらも抗議が出来なかった。最早蘭には不平不満を言えるような空気もだが権利もないと蘭自身感じているからこそ・・・


















・・・そして時間は進むのだが小五郎は時折コーヒーを飲みつつ腕時計を気にするだけで、蘭は苦心しながら声を漏らすだけで特に二人の間で会話が交わされることはなかった。



「・・・さ、十分経ったぞ。結論が出てないってんなら何も言わねーで俺はここを出るぞ」
「っ・・・き、聞くわ・・・どっちでも後悔するっていうんなら、まだ事実をハッキリさせて後悔する方が、まだお父さんに新一以外に誰かいるんじゃないかとか、誰かと一緒にいたいとかっていう気持ちをどうにか出来ると思うから・・・」
「成程・・・こうして出会っちまってんだから、俺らの他にまだ誰かいてもおかしくねーし気持ちを固めるべきじゃねーかって思ってってことか・・・ま、そこんとこは俺も気にしてこれから生きていくべきだって思ったのもあるから、その礼の分も含めてちゃんと話してやるよ」
「っ・・・」
そうして十分が経ったと腕時計を下ろして選択はと静かに問い掛ける小五郎に、蘭が力はなくても一応聞く為の理由を考えたからと漏らすと納得と共に話すことを明言すると、蘭はそっと息を呑んだ。聞くとは言ったが覚悟など到底出来ていないからこそ、何を言われるのか分からないという不安で。









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