知りたいものを知れることが幸せに繋がるとは限らない

「・・・頭では理解出来ても気持ち的には理解したくないって気持ちは今の様子からよく分かる。ただもう俺はここで二度と会わないようにした方がいいって思ってるし、そうするって決めてる・・・俺の事を恨むなら恨んでくれりゃいい。むしろそうして恨んで嫌って自分もお前になんか会いたくないなんて風に思ってくれ。そっちの方が吹っ切るにはちょうどいいだろうからな」
「っ・・・!」
それでこれで綺麗にまとめるとばかりに穏やかな顔で、さも俺が恨まれて済むならというように言葉を発していく小五郎に蘭は信じられないというように表情を歪めた。



(どうして・・・どういうこと・・・お父さんってこんな人じゃなかったでしょ・・・一体何があったの、お父さん・・・!?)
・・・そんな蘭の心中は目の前にいる小五郎が本当に小五郎なのかという、動揺に満ちた疑いでしかなかった。蘭の記憶の中にある小五郎はこんな風な姿を見せるような人物ではないと。
「・・・ま、そういうわけだ。俺はもう行くぞ」
「っ!まっ、待って!まだ聞きたいことがあるわ!」
「・・・何だよ?」
だが言いたいことは言い終わったとばかりに小五郎が椅子から立ち上がって背を向けようとしたことに、慌てて蘭が制止の言葉をかけたことで怪訝そうながらも椅子に座り直す。
「え、えっと・・・そ、そうよ!前にどうして私達に何も言わないし葬式も挙げないようにって言ってお父さんは死んだのよ・・・葬式は必要ないっていうのはまだ分かるけど、どうして私達に何も言わなかったの・・・?」
「・・・」
「え・・・お、お父さん・・・?」
蘭は慌てつつも聞きたいことは何で何も言わずに死んだのかということなのだが、その言葉を聞いてそっと黙って目を閉じてしかめるような表情を浮かべた小五郎に戸惑ってしまった。






・・・蘭が慌てて言葉にした前世の小五郎の事だが、これは英理から後にその事を聞かされた上で冷めた瞳と表情に言葉を向けられたことでその真意を聞けないと、英理と死別するまでついぞ新一もだが蘭もそれらを話題に出すことも出来なかった。その話をして以降にもう気楽に英理に会いに行けなくなった事に、その真意を聞くのが怖かったからだ。

それで英理も亡くなり自分達も亡くなってこうして生まれ変わったのだが、小五郎と再会した時に正直な蘭の気持ちとして強かったのは嬉しさよりも困惑であった・・・これは新一と先に出会った上で別れを選んだ前例があったのもあるが、何も言わずに死んでいった小五郎と会ってどう話をしていいのか分からないという気持ちがあったからだ。

ただそれでも小五郎に会えたという事に喜びもあったのは確かな上で、新一との事を全部が全部大丈夫になった訳ではない蘭は小五郎との再びの親子の関係を築くことで色々とどうにかなるんじゃないか・・・そういった楽観的であったり希望的な観測が蘭の中にあった。

だがそれで大会の時から小五郎が徹底して連絡は最低限しかしないことを約束させにきたことや、こうして会って話をして冷静に自身だけでなく自分の事までもを含めて物事を判断したことに、実際にその判断通りに立ち去ろうとしている。それももう二度と会おうとしないという気持ちを盛大に感じさせるようにだ・・・だからこそ蘭は感情的な意味もあって前世の小五郎の最期についてを切り出したのだ。今まで言ってこられた事は理解は出来るがここを逃せば完全にもう小五郎と離れてしまうと理解したからこそ。ただ・・・









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