知りたいものを知れることが幸せに繋がるとは限らない

「その反応はどうやら自覚出来たっつーか、俺の予想は間違ってた訳じゃねーようだな。ま、新一といたことが悪いって言ってんじゃねーが、こっちで暮らす中で新一と別れた上で久しぶりに会った俺に慰めてもらいたいって思ってた・・・みたいな部分はあっただろ?自分は辛かったからその気持ちをどうにかしてほしいってな」
「っ・・・そう、だよ・・・新一とそんなことになって辛いって気持ちは前よりはマシになったけど、それでもお父さんと会えたんならどうにかならないかって思ったしこれからもどうにか会えないかって思ったの・・・」
「やっぱりそういったとこか・・・」
その様子に当たりと言いつつその内心についてこうかと問い掛ける小五郎に、蘭が苦々しくも小さく頷いて返す様子に納得しながら頭をかく。
「・・・ま、お前からすりゃ辛いかもしれねーがそれでも今言ったようにこっちで生きてきた上での立場だったり、家族とか交遊関係ってもんがあんだ。百歩譲って坂道と一緒に部活をしてるかしてた総北の誰かってんならお前と連絡を取り合うのはまだ関係が出来ても無理はねーかもしれねーが、京伏の去年のキャプテンの姉とか接点があまりにも無さすぎて怪しまれる以外にねーってなるぞ」
「うっ・・・」
「そしてもっと言うんならお前はこっちで就職だとか結婚とかって形でずっと東京に留まるってつもりはなくて、こっちの親父さんの意向もあって京都に光太郎って奴と大学卒業と共に帰るつもりなんだろ・・・だったらなおのこともうここで俺とお前の繋がりは断ち切った方がいいと俺は思ったし、お前も今の話を聞いてそうするべきだっておもったんじゃねーか?」
「うぅっ・・・!」
そうして頭をかくのを止めた小五郎は真剣な眼差しで改めて周りの目があることに加えて、本題とばかりにここでの関係の終焉についてを口にして問い掛けると、蘭は極めて辛そうに表情を歪めながらも詰まった声を漏らすしか出来なかった。小五郎の言うことについて分からないというのではなく、むしろ理屈としてはそうするのが正しいのだと分かるというように。
(・・・新一と別れたって決断したのもあるから昔よりはまだマシに思えるが、それでももう俺はこいつの事を信用も出来ねーし愛することなんかもっとゴメンだ・・・ちゃんとここで終わらせる・・・こいつとの関係を・・・!)
その顔を見ながら表情は変えず、内心で小五郎は考える。決してここで繋がりを残すまいと強い拒否の気持ちのこもった考えを。






・・・小五郎からすれば蘭が新一と断腸の思いでも別れたと聞いた時は本当に驚いたものだった。大小問わずに喧嘩のような物はしてきたことは英理からの時々の連絡で聞いてきたが、それでもそれで別れるというようなことはなかったからこそそんな喧嘩はたまのスパイス程度の出来事でしかなくて、別れるなんてことはどちらからしても有り得る物では元々からなかったのだと思っていたからだ。

そして前世での自身の最期になる前の英理との話の中でもそんなものだと聞いたから、二人はもうずっと別れることなんて無いのだろうと思いつつ死んでいったのであるが・・・こうしてこちらで出会いその話を聞いた時にはそれはそれは意外であったのだが、そう聞いたとしても小五郎の中には新一は勿論だが蘭への不信感が拭いきれる物ではなかった。むしろそういった新一との別れがあったからこそ蘭は小五郎に対して依存とは言わずとも、精神的な支柱になってほしいと願ってくるのではないかと考えた時・・・冗談じゃないという考えしか浮かばなかった。もう愛せる筈もない前世の娘を例え少しは改善の様子が見られたからとは言え、それならと受け入れることなど出来る筈がないと。

むしろそこで浮かんできたのは最初の内は今生での立場を鑑みての遠慮こそはするかもしれないが、次第に自分の領域にズンズンと入り込んでくるのではないかという危惧だ。特に前世の事を覚えててその事を共有しあうかつての親子なんだからと、今の家族達より家族として接してよなんて言い出される事になるかもというように考えた時は怖気を抱いた物だった・・・もう愛情を抱けないかつての娘からそんな風に言われ、そして坂道達を蔑ろにさせるような事を望まれるなど。

ただ流石にそれは考えすぎかもしれないとは小五郎も思ったが、ここで下手に優しくすれば蘭が以降もどのような形であれ小五郎の内心になど気付かず連絡をしてきたり会いに来る事は間違いないだろうと見た・・・それが故に小五郎はここで突き放して蘭との関係を終わらせると決めているのである。決して自分だけの都合でそう言っているのではなく、お前の為にもそう言っているのだという体で反発を招かないようにする形でだ。









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