知りたいものを知れることが幸せに繋がるとは限らない

「それで・・・まず何を聞きたい?」
「・・・まず聞きたいっていうより言いたいことがあるわ・・・お父さんは自分にいきなり連絡されても困るし、お前も逆にそうされても困るだろうからってここで会う為の段取りの為にしか連絡をしないようにするしお前もそうしろって言ってたけど、なんでそこまでする必要ってあったの・・・?」
「その事かよ・・・」
そうして何から聞きたいのかと小五郎が言うと、蘭は不信感溢れる様子で連絡についての事を切り出すとそっと目を閉じる。
「・・・質問を質問で返すようなことを言うが、お前はこれからもまた俺と会ったり連絡を取り合うつもりでいるのか?」
「・・・え・・・?」
「先に言っとくが俺はそんなつもりはないんだよ。ただ誤解を生まねーようにもっと言わせてもらうなら俺は『毛利小五郎』じゃなく『小野田小五郎』としてもう四十近くの年齢まで生きてきて、前世の事や前世の知り合いに会えずじまいだったてことに関しちゃもう俺は色々と吹っ切って生きてきた・・・だから俺からすりゃお前とあそこで会えたことに新一もいるって聞いた時には驚いたもんだが、それでならお前とまた親子としてやっていこうとか連絡を取り合っていこうって気にはならなかったし、思い出話も含めて前のような関係を築くのは無しだって考えたんだよ。今の俺らに血の繋がりなんてない赤の他人だってことも含めてな」
「っ!・・・そ、そんな・・・」
「ついでにもうちょい突っ込んだ事を言うと、俺からすりゃ息子の部活の対戦高の一年前の主将の姉貴ってだけの存在と何で仲良くなったんだみたいに言われんのがオチだって思ったから言ってんだよ・・・全く知らない奴らから見るんならまだ俺らは親子って誤魔化しもきくかもしれねーが、俺からすりゃ坂道でお前からすりゃ光太郎なんて存在が俺らを見るとか携帯のやり取りを見たらどうなると思ってんだ?」
「っ!?」
それでそのまま目を閉じつつ話を進めていく小五郎だが、その中身についてを聞いてハッとした様子を浮かべた。もし今の様子にやり取りを端から知り合いが見たならどう見えるかを考えさせられた時、少なくともただ事ではないというように見るしか出来ないだろうと。
(・・・やっぱりこういったことを蘭は考えちゃいなかったか・・・本気で俺が会いたくなかったってのは言わないようにしようとは思っていたが、こういった細かい事を考えようとしないのは前から変わっちゃいねーな・・・)
そしてそのまま小五郎は蘭に対して呆れたように内心で考える。自分の知る蘭のままの迂闊さは変わっていないと。






・・・小五郎はこうして再び顔と顔を付き合わせて会うならと、蘭に一つの条件を出した。それが今日会うまでの間にどこでどう会うかの連絡のやり取り以外の思い出話だとかも含めた雑談だとかはこちらに送ってくるな、そういったことをするなり匂わせるような発言をしたなら直に会うのは無しにすると。

そんな条件に当然というか、蘭は何でだにそんなことをする理由が分からないと反論してきた上で、それくらいいいじゃないと言ってきた・・・こういった反応になるのが分かっていた小五郎は内心で面倒だと思いつつも、こっちにはこっちの理由があるしお前にも立場があるだろうと言うと共に、そう出来ないならもう会うことなく着拒で終わらせると有無を言わさない力強さで告げると、蘭は若干圧されたようになりながら渋々と頷いた。この辺りは小五郎にそんな引く気はないというように強く言われると思っていなかったが為であろう。

ただ小五郎としては蘭に会いたくないのは気持ち的な部分だけでなく、今言ったような今生での立場だったり人間関係の事も大いに考えていたからこそ迂闊な連絡を避けたいと思ったのであるが・・・そういった機微に関してを考えていなかった蘭にまた小五郎はより呆れたのである。









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